連行?×尋問?×客将!?
「…で、あんたはなんであんな所にいたの?」
「この街に着いたばかりで宿を探している所で偶々通りかかっただけだ。」
「霞、それはほんとうなの?」
「ホントやで。街の人間にも聞いたけどこないな奇妙な格好をした人間は見たことない言っとったで。」
「そう…。霞、確か義勇軍の方で天の御使いが現れたって噂を聞いたけどどう思う?この時期に違う場所で身元不明の男…」
「詠っちの考え通りやと思うで?こないな奇妙奇天烈な服着てとる人間はそうおらへんやろうから。」
「やっぱり…。」
張遼の言葉に賈駆は迅重に向き直る。
「管絡の預言でこう伝えられているわ。戦乱の世に落ちし時、天よりの使い現る。1人は知を司りし天の御使い。1人は武を司りし地の御使い。天の御使いはその知を用いて乱世を鎮め、平定す。地の御使いはその比類なき力を持って乱世を駆け抜けるであろう…とね。」
「それが俺だと?」
「ボクから見れば武に秀でている様には見えないけど…霞から見てどう?」
賈駆に聞かれた張遼は迅重を軽く見て口を開く。
「街で見た身のこなしは確かにただもんやあらへんかったなぁ…。」
「あんた、何処から来たの?」
「何処からとは?」
「惚けないで。その出で立ちに見慣れぬ服に先程の動き…それだけあればアンタが普通じゃない事位解るわよ。」
迅重の言葉に賈駆は眉間に皺を寄せつつそう答える。
「…仮に俺が地だか天だか知らないけど御使いだとして君達は俺をどうするんだ?|(もし利用するつもりなら…)」
「どうもしないわよ。こっちは一応助けられたわけだからね…。」
「…助けたと言っても太守が命じればたかが一般人を捕らえるのなんて造作も無いだろ?」
迅重の言葉に賈駆は
「それをすれば風評が悪くなるし、そもそも月がそんな事する訳ないでしょ!」
賈駆は迅重の言葉に過剰に反応する。
「…俺を暫くの間置いてくれないか?」
「何の心算?あんたが此処に残ってなんの利が此方にあるの?」
「…天の知識を教える。」
「確かに、天の知識は魅力的だけど…アンタに対しての利は何?」
賈駆の言葉に迅重は…
「俺にはこの世界について知り得る事は無い…けど、この世界においての衣食住に路銀が無い。だから天の知識を貸す代わりに」
「客将として雇え…と?」
賈駆の言葉に迅重が頷く。
「要件は分かって貰えたか?」
「要件は分かったわ。あとはその天の知識が本物なのかと武に関しての採用は霞に一任するわ。」
賈駆の言葉に張遼は待ってましたとばかりにテンションが上がる。
「よっしゃ!なら練兵場へ行くで!」
「ちょっといいか?」
「どないした?」
「姓と名と字は分かるが張遼たちが呼び合っている他の名前の様な物はなんだ?」
「あんた、真名を知らないの!?」
「響きからしてなにか重要な物なのか?」
賈駆の信じられないと言う言葉と表情に迅重は肩を竦ませる。
「なにぶん別世界から来た様な者だからな…。」
「…そういえばそうね。良い?真名っての親から貰う名でとても神聖な物。その人の誇りや人生を現す様な物で本人の許可も無く呼べば頸を刎ねられても文句が言えない程の物なのよ。」
賈駆の言葉に迅重は顔色を青くして
「呼ばなくて正解だったな、勘的にヤバい気がしてたがそこまでの事か…。確かに人の人生や誇りと言う物を蔑ろにすれば侮辱の他の何者でもないな…。」
「そう言う事。これで大丈夫?」
「あぁ、問題ない。」
「ほな、改めて練兵場へ向かうでー!」
張遼は飛竜偃月刀を上に掲げて先に玉座を後にする。
「…練兵場が何処だかわからないのだけど…。」
「ハァ…ボクが案内するわ。」
なんとも締まらない空気で賈駆と迅重、そして董卓も練兵場に向かうのであった。