迅重達の放浪記③
久しぶりの方もはじめましての方もいますが作者のクロイツヴァルトです。 ハーメルン様の方でも執筆をしていて此方が全く進んでいない事をお詫びします。 これからは此方の方もチョクチョク更新していきますので、お待ちしていて下さい。
翌日、日が昇るよりも早く目が覚めた迅重は体が上手く動かせないという不思議な現象に見舞われていた。
「・・・なんだ?」
「んぅ・・・」
なんとか動こうとした所、迅重の布団の中から艶のある女性の声が聞こえた途端、迅重は石化したかのように固まり明らかに膨らんでいる自身の布団を凝視し
「・・・まさか」
「んぅ・・・もう朝なのか?」
布団を捲ると服が肌蹴て寝ぼけ眼の趙雲が現れ、迅重は再び固まってしまう。
「何をしている星?」
「何をとは無粋な事を男女で寝ていただけでは無いですか」
「昨日、俺は言ったよな? 男女別々に寝ると」
「おや、あの事は誘っているとばかりに思っていましたぞ?」
「・・・もう良い。 なんか朝からすごく疲れそうだからこの話はこれで終わりだ。」
「そんな淋しい事を言わずに」
「さっさと起きて情報収集をするから星は周泰と一緒に旅の為の日用雑貨と食糧を買っておいてくれ。」
それだけ言って未だに寝そべる趙雲を余所に迅重は寝台から起き上がると近くの椅子に掛けて置いた上着を羽織る。
「主よ、この付近はそこまで危なくは無いが劉表の関係者がいるようですからご用心を」
「あぁ、星達も気を付けろよ? ただ、昼間っから酒を飲むなよ?」
そう言って寝ている周泰に声を掛けずに迅重は宿を後にし街に繰り出すのである。
「街は活気付いていて良いな。 太守の善政が窺える」
街を散策しながら街の様子を見て情報を集めるのに適している場所を探す。
「お、兄ちゃんここ等じゃ見ないが旅のもんかい?」
飯処で客寄せをしている年配の男性が迅重に気付き声を掛ける。
「まぁ、そんな所だな。 色々な街を見てきたがここはとても活気づいていて街の人間も笑顔が溢れているな。」
「当たり前さね。 ここは太守代理の黄忠様が治められているんさ。 先の戦で黄忠様の旦那を戦で亡くされたが、悲しむ前に街を整えねばならなくなったんだよ。 まぁ、その御蔭でこの街は今でも平和でいられるんだ。 俺達は幸せでいられるけど、反面で黄忠様は未だに新しい人を見つけられないでいるんだ。 娘さんもいるというのに俺達には黄忠様の負担を減らせるようにするしか出来ないでいるんだ。」
男性の話を聞いて迅重は
「・・・黄忠殿か善政を敷き、民に慕われる良き太守か・・・一度会ってみたいが、一旅人の俺では会える訳無いな。」
「んな事ねェよ。 黄忠様は下々の意見を聞くためにいつでも門を開けていて下さる。 旅のもんでもきっと御会いになって下さるさね。」
「そうなのか? ありがとう。 お礼と言っては何だが、そこの肉まんを2個貰えるかな?」
「毎度! また何か聞きたい事があれば遠慮なく聞きに来てくれなされ。 ここは色々な噂が集まる所ですからな。 偶にだが、お忍びで黄忠様もお見えになる事が」
「あら、もうお店は空いてますか?」
男性が言葉の途中で声を掛けて来た女性を見つけ、目を見開き止まる。 それを迅重は何事かと後ろを振り向けば紫紺色の長髪に胸元が大きく開いた薄紫色のチャイナドレスを身に纏った美女が娘であろう目鼻立ちが似た女の子が後ろに隠れる様にして迅重を見ていた。
「こ、黄忠様!?」
「あら、今は政務でも視察でも無く娘とご飯を食べに来ただけなんですからそう畏まらないで下さい。」
「は、はい! ただ今御席に案内させてもらいます!」
「それとそこの貴方もご一緒に如何かしら?」
「お、私も御同伴しても構わないのですか?」
「ふふふ、別に言葉使いを気にせずともいいですのに。 先程、話している時に使っていた口調で結構ですよ?」
「コレは参った。 聞かれていましたか。」
そう告げられては迅重も苦笑する。
「お食事でもしながら貴方の話も聞きたいし、璃々も旅の方を見た事無い物だから興味を持っているみたいですし、ご一緒にどうですか?」
「・・・そう言われては断れないな。 お言葉に甘えて御同伴させて頂きます。」
「わーい!」
黄忠の提案に迅重が了承すると後ろにいた璃々が喜びの声を上げ、迅重の手を取る。
「おっと!」
「こら、璃々! はしたないわよ?」
「お母さん、璃々お腹が減っちゃった。 早く行こうよ!」
そう言って迅重を引っ張りながら店に入る璃々を見ながら黄忠は溜め息を吐きながらも娘の笑顔を見て笑みを零すのであった。
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