虎牢関の戦い(13) 董卓軍
「華雄、現在の状況はどうなっている?」
「連合の者達は先の戦いである程度の損耗を与えたから部隊の再編制の最中だろう・・。」
「そうか・・・。後局への一撃を与えたい所だがあの袁家の者がそう簡単にやらせてくれるか・・・」
「難しいかもしれんな・・・。」
陣地に戻った迅重は華雄とその補佐として付けた鳳統の三人で話をしていた。他の者達は万が一の事と間者の警戒をする為に周囲の警戒に当たらせていた。
「袁紹さんは今まで演技をしていたって事ですか?」
「俺の国にある諺で能ある鷹は爪を隠すって言葉がある。」
「どういった意味で?」
「喩で言えば実力や才能と言った物を軽々しく見せないと言う事さ。いざと言う時にだけそれを見せる。故に彼の者には最大限の注意が必要と言う事だ。」
迅重の言葉に成程と呟く鳳統
「しかし、その様な者が相手でも我等は退く事は出来んぞ!」
「心配するな。こっちだってただ守ってるだけじゃない。時間を稼ぎ撤退の為の作戦だという事を勘付かれなければ此方の勝ちだ。その為の餌としての王允があるのだからな・・。」
「ならいいが・・・」
「それと聞きたい事があるのだが・・・戦場の空気が奇妙だと感じなかったか?」
確認するように迅重は華雄に聞くが華雄は感じていないと答える。
「・・・気の所為か?いや、しかし・・・」
「いったい何があったというんだ?」
「・・・俺の勘違いですめばいい話だから気にするな。それよりも今後の作戦の主導は関羽と張遼、そして華雄の三名で行って欲しい。」
「我等三人で・・・?しかし、お前はどうすると言うのだ?」
疑問に思った華雄が問うが迅重は言葉を濁す。
「俺には俺のやる事がある。|(杞憂ですめばいいがこういった勘が働く時は悪い意味で当たってしまうからな・・・)」
「・・・深くは聞かんが、無茶だけはするなよ?」
「善処しよう。」
「お前に何かあったら董卓様や詠も心配するしわたしだってその・・・心配するのだからな!」
「お、おぅ。」
「私の言いたい事はそれだけだ!雛里行くぞ!」
「あわわ!?華雄さん待ってくださいよーー!?」
最後は頬を朱くした華雄が足早にその場を離れ、それに慌てて鳳統がついて行く。
「・・・まったく、短い付き合いでもないが情が湧いたのかもな」
一人呟く迅重は卓上に広げられた地図を見る。
「・・・この戦場を観察できる場所は無い。ならば・・・遠見の術か何かがあると想定するべきなのか?相手は連合だけじゃないのか?問題は後から出て来る物なのか」
溜め息を吐く迅重は自分以外いない天幕の中で一人頭を抱えていた。




