迅重…外史に立つ!
「……う、うぅ」
迅重はさっきまでの光が収まり徐々に視力が戻ってくると一面に広がる荒野を目の前にして呆然としていた。
「……此処は…何処だ?あの少年もそうだが一刀は…?」
迅重は下に落ちてた学生鞄と牙突を回収してから辺りを見回し、自分の置かれている状況を整理しようとする。すると
「おい、兄ちゃん。」
「…ん?」
迅重はその声に振り向くと
「…見るからに凸凹トリオだな…。」
「はぁ?何言ってんだお前?」
迅重は呆れながらも現れた凸凹トリオの容姿に目を向ける。
「(民族衣装の様な格好に頭に黄色の頭巾…?どこかで聞いたような…)アンタ達は?見るからに怪しいんだけど?」
「んな事どうでも良いだろ?それよりも兄ちゃんの持ってる物を渡した方が身のためだぜ?」
長身の男(リーダー格だからアニキと呼称)はそう言って抜き身の両刃の長剣をちらつかせる。
「悪いけど、その程度の殺気じゃ俺の爺さんにも遠く及ばないな。」
「あ…?」
「追い剥ぎ目的だって言うなら叩き潰す!|(話はそれからでも聞き出せるよな…?)」
そう言って迅重は牙突を手首の返しのみで回し脇で固めて構える。
「馬鹿め!コッチは三人なんだ!構わねぇ、殺して身包み剥いでやる!行くぞデク!」
「わ、分かったんだな。」
3人の中で体格が一番低い男…チビはそう言って短剣を抜いて迅重目掛けて走る。遅れてデクと呼ばれた巨漢が大きな棍棒を担いで愚鈍な動きで追従する。
「…遅い!」
「ガッ!?」
トンファーの射程圏内に入ったチビを遠心力を生かした一撃を加えて宙へかち上げる。
「よ、よくもやったんだな!」
デクはチビがやられた事に怯むことなく担いでいた棍棒を迅重に振り下ろす。
「チッ!」
「おぉぉぉ!」
すぐさまバックステップで回避するがデクはなおも棍棒を振り回して迅重を追い掛ける。
「うっとおしいわ!連牙飛燕脚!」
牙突で棍棒を打ち上げ、左右のトンファーで水月を打ち、切り返しで脇腹を回転させて長短を逆転させて抉り込む様にして打ち込みトドメに側頭部に飛び込みの回し蹴りを決めて地に沈める。
「…ふぅ、後はアンタだけだ。」
迅重の言葉にアニキは…
「う…ば、化け物かよ!」
「さて…お仲間がやられたわけだけどどうする?」
迅重はそう言ってトンファーを軽く振る。
「わ、分かった!降参する!」
「賢明な判断だな…。」
…………………………
「で、聞きたい事なんだが…此処は何処だ?」
目を覚ました二人を交えて迅重は改めて情報を聞き出す。
「へい、此処は漢の都…洛陽から少し離れた荒野でさぁ。」
「漢…だと!?しかも洛陽!?今の年代と帝は!」
「漢王朝の時代で帝は霊帝です。」
アニキの言葉に迅重は今の自身の状況を仮定する。
「(つまり…あれか?あの光の所為…いや…あの銅鏡が割れた瞬間だから元凶は銅鏡か?それの所為で時間を飛び越えたと言うのか?)そうか、分かった。で、俺は洛陽に行くがおまえ達はどうする?」
「官軍に突き出したりしないんですかい?」
アニキの言葉に迅重は苦笑する。
「俺の目的は話を聞かせてもらう事だけだからな…。欲を言えば故郷があるなら帰って親孝行でもしてやるんだな。」
迅重は踵を返して洛陽に向かう。
「(先ずは洛陽に行って董卓が史実通りなのか確かめて見るか…?)はてさて…一体全体どうなってるのかねぇ~?」
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