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開かれた外史への扉



 「さて…こんな所かな?」


 迅重は歴史館で漢の時代の展示物とそれに連なる説明文を見ながらメモを取っていた。


 「迅重も課題をやりに来たのか?」


 そこへ一刀が現れる。


 「そう言うお前は終わったのか?」


 「あはは…それがさっぱりで…」


 「まったく…ん?」


 一刀と話しながら通路を歩いているとちょうど銅鏡が展示されている場所に1人の少年が佇んでソレを見つめていた。普通の人が見たなら何のこともないが…


 「(アイツ…普通じゃないな。あんなに殺気を振り撒く様な奴あの学園じゃ見ない顔だが…)」


 迅重が不振に思い一刀を伴って物陰に隠れる。


 「な、なぁ…。アイツって見ない顔だけど…」


 「静かに…(辺りに人気が無さ過ぎる。守衛らしき人間まで…ナニかがおかしい…。)一刀…お前、護身用の物を何か持ってるか?」


 「え…?一応だけど剣道で使う木刀を竹刀袋に入ってるけど…」


 「…木刀か。よし!」


 俺は一刀の木刀を確認し、自分の鞄から牙突を取り出す。


 「ソレって…」


 「どうも嫌な予感がしてならない。兎に角一度様子を」


 見ようと言葉を続けようとすると少年がガラスケースを無手で割り砕き銅鏡を手に取るとその場から駆け足で離れていった。


 「ッ!?追うぞ!」


 「ちょっと待ってって!」


 奴が離れた後を俺は矢の様に走り、一刀がその後ろから木刀を持ったまま追い掛ける。


 「オイ、止まれ!そこの盗っ人!」


 雑木林の通りまで追いかけ、両手に牙突を装備した迅重は声を上げる。


 「………」


 「その銅鏡は市の文化遺産だ。大人しく渡せば痛い目を見ずに済むぞ?」


 「…チッ、何も知らない奴が…出しゃばるな!」


 「っと!」


 迅重は咄嗟的に脇の方へ牙突を構えると鉄同士がぶつかり合うときに出る音を聴く。


 「オイオイ…お前の足は鉄製か…?」


 「………」


 「黙りか…よ!」


 今度は迅重が仕掛ける。トンファーを振り回しながら流れる様な体裁きで連撃を繰り出す。叩く、突き薙ぎ払う。


 「……っく!」


 少年はそれを辛うじて勢いを殺し、捌くが一撃が鼻先を掠める。


 「……やはり貴様たちは生かしておかない!鐵迅重…そして北郷一刀!」


 少年はそれまでとは比較にならない程の速度で迅重に接近し拳と蹴りだけで迅重を劣勢に追い込む。


 「なにっ!?」


 「死ね…!鐵迅重!!!!」


 尋常ではない蹴りで脇が空いた所に殺気づいている少年が銅鏡を持っていない手の方で手刀の様に振り抜く。


 「うおぉぉぉぉ!」


 「チッ…!?」


 そこに木刀を振りかざしながら一刀が少年へと振りかぶるが少年は難なく避けるが偶然に銅鏡を持った腕に当たった。


 「あ…?」


 「え…?」


 一刀と迅重はその瞬間ときを迎える。銅鏡が地に落ち、割れる音と共に眩い光が辺りを瞬く間に埋め尽くす。その光景に対して二人は呆けた声を出す。


 「チッ!始まったか!」


 「な、何なんだよ!これは!」


 「一刀、落ち着け!貴様!何をした!」


 「俺は何もしていない。事を起こしたのは貴様たちだ!……まぁいい。貴様等の犯した罪はその命を持って償うがいい!外史への突端は開かれた!彷徨うがいい、北郷一刀!そして鐵迅重!!!!」


 「「ウワアァァァァァ!?」」


 二人の悲鳴が夜の闇を裂くが、次の瞬間にはその林道には誰1人として存在・・していなかった。


 ……………

 「貴方のお孫さんはご主人様と一緒に行ったみたいねん?」


 とある一室で二人の人物が向かい合うように座っていた。


 「迅重…。」


 「偶然にもわたしの管轄内だけどどうするのかしら?」


 「……向こうで会う事があればコレを渡してくれぬか?」


 「ッ!?…コレを?貴方たちの家宝…いえ東方の…彼に扱いきれるかしら?」


 「元よりそのつもりで鍛練をさせてきたからの…。第一に儂が手ずからで育てた。そんじょそこらの者には引けを取らぬ。用事が済んだのならさっさとお主の管轄する外史に戻れ!」


 「もう…そうカリカリするものじゃないわよ…?それじゃ、わたしは戻るわね。」


 立つと2㍍はありそうな人は卓の上にある長方形の入れ物を手にして闇に溶けるようにして消える。


 「迅重…これはお主が友と乗り越えなければならぬ試練じゃ。決して死ぬではないぞ…」


 座ったままの人は上に顔を向けたままそう呟く。その呟きもまた闇に溶け込むようにして反響も残さずに消える。


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