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迅重、静養するとのこと



 「アンタには私達の屋敷に住んで貰うわ。」


 「…俺が月と詠の屋敷に住む?」


 仮の迅重の部屋で詠がそう告げれば当然の様に迅重が疑問の声を出す。


 「つべこべ言わずに移動しなさい!これは月からの…太守様の命令よ。」


 「はぁ、分かった。移動すればいいんだな?」


 溜め息交じりに迅重は了承する。


 「それじゃあ、昼時まではこの部屋にいて。時間になったら屋敷の方へ移動するから。」


 「分かったよ。武官の仕事は出来ないけど文官の仕事は出来ると思うが…。」


 「アンタの場合はまずは心の整理からしないとならないんだからちゃんと大人しくしてなさい!」


 詠はそう言いながら迅重の脳天にチョップをかますのであった。


 ――――――――――――――――――――――――――


 「…で終わればよかったんだがなぁ。」


 「迅重さん、何か言いました?」


 「いや、なんでもない。」


 昼が過ぎたころ、詠が迎えに来て直ぐに董卓邸へと移動し、月と交代して詠は残った書簡の整理の仕事の続きをしに行ったのである。


 「此処が刃重さんのお部屋になります。」


 月に案内された場所は屋敷の離れの一室だったが、部屋の間取りに調度品をみる限りまず一般的っは無い事は刃重でも理解した。


 「何か御用があれば机の上にある鈴を鳴らせば使用人さん達が来ますので。」


 「色々と迷惑ばかり掛けてすまない…。だが、俺みたいな奴がこんな立派な部屋に住んでも構わないのか?」


 「そんな事…私はただ刃重さんの心配をしてるだけですから…。気にしないで下さい。それに刃重さんには私達も助けられてるのですが恩返しみたいな物と考えて下されば良いのですよ?」


 刃重の疑問を月は柔らかな笑みと共にそう告げる。


 「其処の庭周りで鍛練をしたりしても構わないか?」


 「体を動かすのは構いませんけど…大丈夫ですか?」


 迅重の言葉に月が怪訝な表情で問う。


 「あぁ、鍛錬といっても氣の巡りの確認と精神統一とかかな?もろもろの事が落ち着いた時には体を動かそうかと思ってるけどね…。」


 「そうですか。では、私は政務の方に戻りますので」


 そういって迅重に会釈をして迅重の部屋を出て行く。


 「一刀、お前は今、何処で何をしているんだろうな…」


 迅重は空に上がっている太陽を見上げながら悪友の事に思いを馳せていた。



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