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少年、変態に会うとのこと



 「迅重、アンタ今日は休みね。」


 「……へ?」


 詠の執務室で言われたその言葉に迅重は間の抜けた声が出る。


 「何度も言わせないで。こっちも忙しいんだから。」


 呆れた声で言いながら詠は手元にある書簡に筆を走らせる。


 「いや、急に休みと言われても…」


 「あぁ、もう!なら町に出ればいいでしょ!お金は給金で持ってるでしょ!」


 ――――――――――――――――――――――――――――


 そんなやり取りをした後に迅重は城下街に来ていた。


 「…とは言っても何をすりゃいいんだ?」


 考えながらも迅重は立ち並ぶ店を見て回る。


 「結構色々な店があるんだな…。不思議なのは俺の世界にあるカフェテリアに似た店が見られるが…」


 「お?兄ちゃん、どうだい肉まん一つ。ウチの店の人気商品だぜ?」


 「肉まん…そういえばそろそろ昼時か。親父さん、肉まん一つ貰えるか?」


 「毎度!」


 迅重は肉まんを頬張りながらどんどん道を進んでいく。


 「ん?ここは…わずかながらに人払いをされている気配があるな…。|(俺も俺で爺の訓練と言う名の地獄を生き抜いていたからなのか知らんが気配等に敏感になったな。)」


 そう独りごちながら裏道の通りを歩く。


 「ここか…。」


 暫く歩いて行くと迅重の目の前には


 「明らかにBarだよな…?」


 迅重が店の前で云々唸ってると…


 「あらぁ~?可愛い子ヒツジちゃんがいるじゃな~い」


 「ッ!?誰だ…ってえぇぇぇぇ!?」


 迅重の目に映った人物は筋骨隆々とした長身の美丈夫…ではなく筋骨隆々な事には変わらないがその恰好に迅重は度肝を抜かれて悲鳴に近い声を上げてしまう。


 「あら、こんな可愛い子を見て悲鳴を上げちゃうなんて意外に可愛いのね♪」


 その男はオネエ口調で喋りながらも腰をくねくねと動かしながら迅重に歩み寄る。


 「こ、こっちに来るんじゃねえ!」


 迅重が腰に差していた旋棍を取り出し構えるのも無理はない。そのオネエ言葉を使う男の恰好は半裸にブーメランパンツの様な物を穿き禿げ上がった頭の横からどう残ったか解らない二房のおさげが存在していた。そんな恰好をしている者に迫られればどんなに屈強な者であろうと恐れおののくであろう。


 「酷いわねん!せっかくあなたのおじいさんから預かった物を届けてあげようと思ったのに…」


 その男の言葉に迅重はより一層警戒心を強くする。


 「待て、なんでお前が爺の事を…そもそもこの世界で爺の事を知ってる?」


 「んふふ、それは漢女(おとめ)のヒ・ミ・ツ♥」


 「気色悪いわ!」


 迅重は戸惑いも無く旋棍を振り抜く


 「もう、危ないわねん?」


 しかし、男はそれを難なく躱し迅重の背後を取る。


 「なッ!?」


 「血気盛んなのは良いけど話を聞きなさいな…。」


 男はそう言うと迅重に向かって何かを投げ渡す。


 「…これは?」


 「貴方のお爺さんからの預かりものよ。本当に貴方が護りたい者が現れた時、力になってくれるわ。」


 「俺の力に…?アンタは一体…何者だ?」


 「アタシの名前は貂蝉。洛陽のしがない踊り子よん♪」


 「…その恰好で踊り子か?いや、そもそも突っ込みどころが多すぎる。貂蝉ってそもそも三国志に登場する人物だが女性だが…」


 「それもヒミツよん。ミステリアスな女は魅力的なのよ。」


 男、貂蝉の言葉に迅重は大きく溜め息を吐く。


 「まぁ、いい。これはありがたく貰っておく。」


 「そうそう、一つだけ忠告しておくわねん。今の貴方にはあの男は倒せないわよん。」


 「貴様、あの男を知っているのか!」


 「それはまた今度ね。今は目の前の事に集中なさい。」


 「…確かに。黄巾党の後には董卓の事件が待ってるからな…。あの子達を史実通りに死なせる訳にはいかない…。」


 迅重の言葉に貂蝉は笑みを浮かべる。


 「なら、良いわ。もう一つ言うのならこの世界は現実であり現実では無いと言う事よ。」


 「胡蝶の夢…か。」


 「似たような物だけどもこの世界で死んだら本当に死ぬ。これはゲームではないわ。」


 迅重の答えに貂蝉は真剣な表情で意味深な事を呟く。


 「分かった。忠告はありがたく受け取って置く。ただ、俺はこんな所でくたばるつもりは無いがな…。」


 「ふふふ、ならいいわ。武運を祈るわ♪」


 そう言った瞬間、迅重は表の道に戻っていた。


 「なッ!?」


 直ぐに迅重は先程の道を探すがあの店は最後まで見つける事は出来なかった。


 「なんなんだ、いったい…?」


 狐に騙された気分だったが迅重の手に握られた四神を象ったシルバーアクセサリーがそれを現実だと物語っていた。


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