プロローグ
「お~い、北郷!遅刻するぞ~!」
「分かってるって!」
「カズちんなら分かるけどクロ助がこないな時間に一緒になるとは思わんかったな~?」
「爺さんの朝稽古が長引いたんだよ。」
俺の名は鐵迅重鐵家の長男で文武両道を地で行く事を強要される人間だ。今は聖フランチェスカ学園の副生徒会長をしている。
「あのお爺さんか…結構怖いよな?」
そこに相槌をするのは同学年の北郷一刀。何処にでもいそうな奴だがその無害さから女子から好かれてはいるが鈍感な様で一向に気付かない罪な男である。
「雰囲気はな…俺も最初会った時は怖いって感情が先に来たけど何回か会う内に慣れたな。」
「で…お爺さんの朝稽古って何をしてるんだ?」
「ん~、剣術や棍術に棒術。他にも体術もやったりかな?まぁ、日替わりメニューって感じで色々変わるけどな…。」
「それに加えて母さんや婆さんが理系で親父が歴史に強いからな…。IT企業の社長の癖に理系よりも歴史が強いって…」
「ま、鐵家の御曹子の迅重からしたら複雑やろなぁ。」
で、隣を歩くのは及川…名前は知らん。一刀経由で知り合って間もない奴だが独特な関西弁で喋る以外にこれと言った特徴は……よく一刀を餌にするべく連れて軟派しに行っては惨敗するが懲りずに挑んでいるらしい…
「にしても…クロ助の家は武家屋敷さながらで着物のお姉さんがぎょうさんおったな~!」
「……及川如きが俺の家の給仕には相手にすらされないだろうな…。教養のある人しか採用されていないから軽い奴は見向きもされんよ。」
「クロ助は身も蓋もないわ!ワイにも少しは夢見させてくれたってええやないか!」
「虚しい夢だな。」
「クロ助の馬鹿ぁぁぁぁぁ!」
そう言って及川は俺と一刀を置いて及川は学園の方へ走って行く。
「…俺達も行くか。」
「そうだね…」
………………
「迅く~ん!」
「ハァ…今度は何なんだ?会長…」
「そんな他人行儀な呼び方をしないでよ~!親しみと愛を込めて遥さんって呼んでよね!」
あれからクラスでの授業も滞りもなく進み今は放課後で俺は生徒会室で会長の長谷川遥先輩と一緒に遥せ…遥さんと仕事をしていた。明るい茶色のロングの髪を一つに束ねてポニーテールにしており活発的な彼女の雰囲気に合っている。スタイルも下手なモデルなんかよりも良くて偶に芸能関係のスカウトに声を掛けられているのを見かけたほどだ。
「この案件自体遥さんがやるべき事の筈ですが…何故残っているのですか?まさかまた遊んでいてやっていなかったのですか?」
「いや~、なんかめんどくさいじゃん?」
「…かえら「待って!直ぐに終わらせるから!」ハア…最初からそうしてくれると助かるんですけどね…。」
この人は気紛れでイベントやゲリラ的に様々な催し物を始める為、教師、校長などが手を焼いていた所に俺が入って手綱を握る羽目になっているのである。理事長の孫かなんか知らないが傍迷惑な物であるが中々に楽しいから良いけどな…
………………
「いや~助かったよ~。迅くんのお陰で問題無く終わったよ!」
「それは良かったですね。」
「迅くんはこの後の予定ってあるの?」
「ん~、歴史館で予習を兼ねて年号を調べたりかな?」
「それだけ頭が良いのに予習なの?」
「今の自分があるのは努力したって言う土台があってこそなんですよ?怠ればそれだけでそれまでに積み上げた努力が無くなる事がある事だってあるんですよ?」
俺の言葉に遥さんが少し呆気に取られる。
「迅くんって偶に私よりも年上なのかなって思わせることが多いんだけど…?」
「これは親父や爺さんの受け売りだよ。長く生きてる人の経験ってのは馬鹿には出来ないから…それじゃ俺はこの辺で。」
「うん!また明日ね!」
そう言って俺は歴史館へ。遥さんは帰路に着く。
まさかこれが俺の日常の最後になるとは考えもしないで…