表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第三章
32/51

暴露


「姫様!!」


 神殿に戻った途端に聞こえた甲高い声。

 入口でウロウロしてたアマリは私を見て青ざめた。

 うむむ。ダメだって言われたのに逃げ出しちゃったから、怒ってるよね。

 ちゃんと覚悟を決めて、叱られよう。


「アマリ、ごめ――」

「姫様! お早く、その汚らわしい獣の背からお降り下さい!」


「え?」


 アマリの言葉にビックリ。

 汚らわしい獣って、まさかカイドのこと?

 リオト達が怒ってるのがわかる。でもカイドは気にしてないみたいで、私が降りやすいように屈んでくれた。


「ありがとう、カイド」


 よいしょ、とカイドから降りて、駆け寄って来るアマリを見上げた。

 私は反省することばっかりの悪い子だけど、今の間違ってる言葉はしっかり訂正しないと。


「アマリ! このヒョウさんはカイドなんだよ! 私をここまで乗せて帰ってくれたの。それにカイドはちっとも汚くないんだから! ツヤツヤのピカピカで、とっても綺麗なの! それにそれに、カイドの胸毛はすっごくフワフワで、柔らかくて、気持ち良くって、ほっぺたでグリグリしたら、もふもふってなって、むふふって幸せなんだよ? しかもとってもいい匂いなんだから!」


「……」


 フンフンって鼻息荒く説明したら、立ち止まってたアマリがいきなり泣き崩れた。

 なんで!?


「姫様が……私の姫様が……まさかそのような……」


 そのようなって何? 私が泣かせちゃったの? 言い方がきつかった?

 ずんどうの腰に当ててた両前足を慌てて下ろす。

 それから、どうしたらいいのかわからなくてオロオロしてたら、ファドが大声で笑い始めた。

 なんで?

 リオトもミザールも笑ってるし、メラクはちょっと困った顔して、ヴィーは……ファドを思いっきり叩いた。


「って! なんで叩くんだよ!?」


「その下品な笑い声、バカっぽさが増してますわ」


「んだよ! カイドがうろたえる姿なんてそうそう見れねえだろ?」


 え? カイド?

 驚いて振り向いたけど、カイドはいつものカイドだった。

 ポンポンと私の背中を軽く叩いて、落ち着かせてくれる。


「ジャスミン、女官長と部屋に戻って、きちんと話をした方がいい」


「……うん」


 そうだ。アマリが泣いてるのは、きっと私が逃げ出したからだ。

 ちゃんと謝らないと。

 ぽてぽてと歩いて、膝をついたアマリの側に行く。


「アマリ、あの……心配かけて、ごめんなさい。色々ごめんなさい」


 なんだか謝ってばかりの私は、ちっとも成長してない。

 やっぱりおしとやかは無理かも知れないけど、元気いっぱいの素敵なお姫様を目指そう。

 うん、頑張るよ。

 何度目かの決意をして、そっとアマリの服に触れてみた。


「アマリ、わっ! ふぇむっ!!」


 途端にアマリがギュッと私を抱きしめたから、変な声が出ちゃったよ。


「女官長! ジャスミンが苦しがっているじゃない!」


「確かにそうだけど、姉さんが言ってもね……」


 ミザールとリオトのいつものやり取りが聞こえる。

 なんだかホッとするけど、ちょっと苦しい。

 でも、この感覚は覚えてる? 


 うん、すごく覚えてる。

 なんで今まで忘れてたんだろう。

 ずっと、いつも私を抱きしめてくれてたのに。

 あたたかくて、優しくて、安心できる、アマリの細い腕の中。


「アマリ……今まで、本当にごめんなさい」


 こんな体じゃ抱きしめ返すことはできないけど、それでも精いっぱい抱きつく。

 って、あれ? ひょっとして、これは……。


「人間になりそう……」


「まあ!」


 ぼそりと呟いた私の言葉に、アマリがすばやく反応した。

 アマリは猛スピードで私を抱っこしたまま駆け出して、気が付いた時には編みぐるみのお部屋に到着してた。

 ミザールとヴィーが追いついたところで、人間に変身。

 せっかくの変身ブランケットは、肝心な時に持ってなくて大失敗だよ。

 スッポンポンの私に、アマリはすぐにストールみたいな大きな布を巻き付けてくれる。


「本当に……姫様はお変わりありませんね。いつも限界まで変化していらっしゃるのですから……」


「そうなの?」


 呆れた声の中にも、あたたかい響きを感じる。

 さっきまで冷たい感じがするなんて思ってたのが嘘みたい。


「さようでございます。それで私共は何度も肝を冷やしました」


「……ごめんなさい」


「そのお言葉も、何度も頂いております」


 うう。冷たくはないけど、厳しいことに変わりはないよ。

 しょんぼりした私を、ミザールが庇ってくれる。


「あら、ジャスミンの変化した姿はとても可愛らしいんだから、いいじゃない」


「もちろん、姫様は人間のお姿でも、ネズミのお姿でも、この世で一番でございます。ですが、時と場所を選んで頂きたいと申し上げているのです。今までに何度お着替えが間に合わず、このお姿を皆の目に触れさせてしまったとお思いですか?」


「ええ!?」


 そんな恥ずかしい衝撃の事実があったなんて。

 皆って、いったい誰のことなんだろう。さっき、おじさんとかもいっぱいいたけど……。


「ま、まさか、私……スッポンポンで歩き回ったりしてないよね?」


「ええ、もちろんでございます」


 そっか。さすがに、そこまでは私もしないよね。

 大きく頷いたアマリの言葉にホッとひと安心。

 でもアマリは、そんな私にとどめの一撃。


「姫様は、歩いたりなさりません。走り回っておいででしたから」


 そ、そんな……。

 ひょっとして、私の記憶がないのは忘れたい過去のせい?

 きっと、きっとそうなんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ