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ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第三章

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対面


「ジャスミン、着きましたわよ」


 ふむむ? あれれ? 私、寝てたのかな?

 ヴィーに優しく揺り起こされて気が付いた。

 何か懐かしい夢を見てたみたい。


「ジャスミン、用意はいいかしら?」


「あ、ちょっとだけ待って」


 ミザールに声をかけられて、ヴィーのお膝の上で慌てて毛づくろい。

 久しぶりに帰るのに、寝ぐせついてたらカッコ悪いからね。

 うん。鏡はないけど、きっと大丈夫。自慢の毛はフワフワだもん。


「もういいよ」


 私の合図でミザールが扉を小さく叩いた。

 すると外から開けてくれたのはカイド。

 ミザールが先に降りて、私に手を差し伸べてくれる。

 それでヴィーからミザールに抱っこ交代。

 なんだか赤ちゃんみたいで、ちょっと恥ずかしいなあって思ったけどしょうがないよね。


 お外に出ると、いっぱいの人がいてビックリ仰天。

 先に着いてたリオト達もいて、その後ろになんと王子様が立ってた。

 もちろん、カイドもリオトもファドもメルクも王子様なんだけど。

 なんていうか、王子様然としてるっていうか、ガラスの靴を持ってそうっていうか、笑ったら歯がキラリってしそうっていうか。

 きっと、この人がお兄さんだ。


「おかえり、ジャスミン。無事で良かったよ」


 優しく微笑んで挨拶してくれた王子様は金色の髪に碧い瞳。

 私が人間になった時とちっとも似てないけど、間違いなくお兄さんだ。

 だって、ビビビってきたもんね。

 ちょっとホッとして、私も挨拶をしようと思ったら、ミザールの腕にギュって力が入って、すぐには声が出なかった。


「よくも、そんな呑気な挨拶ができたものね!? そもそもあなたが――」

「姉さん!」


 言いかけたミザールを止めたのはリオト。

 だけどそのリオトも怒ってるみたい。

 どうして? なんだか空気がピリピリしてるよ?

 不安になってカイドを見たら、すぐに笑ってくれた。


「皆の怒りもわかるが、ここでは場違いだ。ジャスミンも怯えているじゃないか」


 カイドの言葉と一緒に、張り詰めていた空気もミザールの腕の力も弛んで、ひと安心。

 やっぱりみんな怒ってたみたい。

 でもなんで?

 お兄さんは困った顔してる。


「ごめんなさいね、ジャスミン。苦しかったでしょう?」


「ううん、大丈夫」


 よくわからないけど、ミザールは謝ってくれたし、ケンカにならなくて良かった。

 みんな仲良しが一番だよね。

 そうそう、ちゃんとお兄さんにも挨拶しないと。

 ミザールの腕の中で、お兄さんへと方向転換。


「あの――」

「あなた方はいったい何をなさってたのです!」


 うむむむ?

 今度はいきなり聞こえた甲高い声に遮られちゃったよ。

 でもなんだろう? 胸がキュって苦しい。それにこの声……。


「姫様はお怪我をなさっているじゃありませんか!」


 お兄さんの隣に立ってる女の人が、蒼白な顔で私を見て叫んだ。

 怪我って?……あ! 

 そうだ、私の大切なおひげ、折れちゃってるんだ。


「ちがうの! これはちょっとしたアクシデントっていうか、みんなは――」

「いいのよ、ジャスミン。ありがとう」


 ミザールが私の言い訳を遮って、チュッと私の頭のてっぺんにキスをした。

 むふ。ちょっとくすぐったいよ。

 って、さっきまで蒼白だった女の人が真っ赤になって、ミザールを睨んでる。

 なんだか怖いよ。


「ジャスミンの怪我については、ただ謝罪するしかありません。ですが、それはジャスミンに対してです。メグレズ殿にも女官長殿にも、私は謝罪も弁明もするつもりはありません」


「よくもそんな……。ですが今は、姫様にお体を休めて頂かなくては。長旅でお疲れでしょう?」


 そう言って、手を差し出されたけど、どうしよう。

 よく知らないのに抱っこされるのはちょっと……。

 今は優しく笑ってくれてるけど、さっきまで怒ってたし、なんだか冷たい感じ。


「女官長殿、先に伝えた通り、ジャスミンは記憶を失っているのです。ですから改めて紹介させて頂けませんか?」


 カイドの言葉に女の人はハッとして、手を引っ込めた。

 私がためらっているのをカイドは気付いてくれたんだ。

 さすがカイドだね。

 でも、ミザールはフフンって感じで顎を上げてる。

 ミザールってなんだか好戦的だなあ。メルクもヴィーも、なんとファドまで、ずっと黙ったままなのに。

 みんなから正面に視線を戻したら、女の人が泣きだしてビックリ。


「私は……姫様がお生まれになってからずっと、お世話をさせて頂いた女官長のアマリです。まさか姫様が私をお忘れになるなんて……。お姿が見えなくなってからはもう生きた心地がしませんでした。ですが、無事にお戻りになって本当にようございました」


「えっと……あの、アマリさん。心配かけてごめんなさい。只今、戻りました」


「まあ! 姫様、どうか今までのように、アマリと呼んで下さいませ!」


「は、う、うん」


 なんだか感情の激しい人だなあ。

 心配してくれるのはわかるけど、息苦しいっていうか……。

 って、ダメダメ。そんなこと考えちゃ。

 周りにも涙ぐんでる人はたくさんいて、それだけ私はみんなに心配かけてたってわかった。

 反省しないと。


「ジャスミン、僕は七星の騎士の一人で君の兄のメグレズ。今までは“お兄様”って呼んでくれていたけど、まあ好きなように呼んでくれてかまわないよ」


「う、は、はい……」


 お兄様ってちょっと恥ずかしいね。

 でもお姫様っぽくていいかも。

 うん、素敵なお姫様計画第一歩だ。


「お、お兄様、心配かけてごめんなさい」


「……いや、謝らなければならないのは僕の方だよ。騎士として、女神様を守れず見失ってしまったんだからね」


「ふんっ! よく言えたものね」

「ミザール!」


 そういうことだったんだ!

 みんなが怒ってるのは、騎士として私のことをお兄さんが守れなかったから。

 本当に私が女神様なのかどうかはわからないけど、このイガイガ空気の原因は迷子になった私のせいなんだ。

 うむむむ。これは大問題。

 騎士さんはみんな仲良しだと思ったのに、このままだとお兄さんだけ仲間外れになっちゃう。

 だとしたら、これから私がすることは一つ。

 みんな仲良し大作戦だ!!




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