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ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第一章
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聖なる森


 私はたぶん、家族に見守られて安らかな眠りについたんだと思う。

 ぼんやりとした記憶ではもう、家族の顔も思い出せないけど。


 いわゆる前世ってやつ。

 けっこう曖昧だけど、幸せだったのは覚えている。

 でも、このもやもやした感情は、親不孝をしてしまったからかな?

 お父さん、お母さん、早くに死んじゃって本当にごめんね。

 だから今度は病気に負けないように、精いっぱい生きるよ。……あ、私、病気で死んだんだ。うん、少し思い出した。


 要するに、私は新しい生を歩んでいる。

 私という存在を自覚した時には森の中にいて、ちょっとパニックになってしまった。

 そんな私に、動物さん達はみんなとても優しくしてくれた。


 ここは広くて深い森の中。

 一切の殺生が禁じられている『聖域』を中心に抱くこの森は、『聖なる森』と呼ばれているんだって。

 聖域にはいつも花が咲いてて果実もあって、怪我とかも早く治るから、困った時の避難場所として、肉食動物さん達も草食動物さん達も仲良く過ごしている。


 とはいえ、少し前に雷が落ちて火事になりそうな時があった。

 それはもう一大事。

 だけど私は人間だった時の記憶があるから、火が怖くなくてどうにか消す事が出来た。


 って、本当は怖くないなんて嘘だったけど。

 すっごく怖かった。

 でも、右も左もわからない私に優しくしてくれたみんなに恩返しをしたかったから、勇気を出して頑張った。


 それでいつの間にか私のことを、みんなは姫さまって呼び始めた。

 ちょっと恥ずかしいけど、呼び名に恥じぬように頑張ろうと思う。

 まあ、今の私はネズミなんだけどね。


 うん、ネズミっていうか、正確にはハムスター?

 前足は意外と器用に使えるから。

 そして、ちょっとデブっちょ。

 大きさはウサギさんくらい?


 最初はショックだった。

 自分の手の形やぽっこりお腹、ちょこんとした足。

 でもしょうがない。

 うろたえる私のことをみんな心配そうに見ていたし、さっさと諦めて水飲み場で顔を映したら、けっこうかわいかった。

 イケてると思う。ネズミとして。


 いつか素敵なネズミさんと恋愛して、ネズミ算式に子供産んで、幸せな人生を……ネズミ生を歩むんだ。

 まあ、みんな私よりも小さいんだけど。


 それに実は、もう幸せだしね。

 だって、この森のみんなは優しいから。

 ネズミさん達もウサギさん達も小鳥さん達も、みんなみんな。

 私はこの平和な森が大好き。


 だから、人間がやって来た時には驚いた。

 剣を持っている人もいるし、弓矢を持っている人もいる。

 しかもトラ? 黒い毛におおわれた怖そうな動物さんも一緒だ。


 まさか狩りじゃないよね?

 人間にとっても聖なる森なんだよね?


 不安になりつつ、久しぶりに人間を見かけたことが嬉しくて、こっそり後をつけて様子をうかがっていたら……当たり前だけどトラさんには気付かれていた。

 そしていきなり飛びかかられて、あっという間に昇天。


 私、デブっちょでボリュームもけっこうあるし、たぶん美味しいはずだから。

 どうか、食べるなら私だけにしてね。




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