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賢者の埋蔵金 その22

風が、


やさしく谷を吹き抜けました。


巨大だった永遠のシチューは、


少しずつ小さくなっています。


湖みたいだった鍋も、


今では大きなテーブルサイズ。


集まっていた人々や魔物たちも、


どこか穏やかな顔。


オークと旅人が普通におかわりしてます。


ショウタがぼそっと。


「なんかもう感覚バグってきた……」


白もふは満腹でころころ転がっています。


『しあわせ……』


巨大猫も珍しく満足顔。


『……悪くない』


夜の龍は空を見上げました。


『静カナ夜ニナリソウダ』


クロックとリバースは、


並んで時計を調整しています。


今度は逆回転じゃない。


ちゃんと未来へ進む針。


サヨが笑いました。


「なんだか全部つながった感じだね。」


ピースケは鍋を見ながら、


のんびりうなずきます。


「はいですぅ。」


「冒険してぇ。」


「迷ってぇ。」


「おなかすいてぇ。」


「最後に誰かとごはん食べるんですねぇ。」


ショウタが苦笑い。


「この世界の真理、ずっとそれだな……」


そのとき。


永遠のシチューの鍋が、


こんっと小さく鳴りました。


全員が振り向きます。


鍋のフタが、


ゆっくり開きました。


ぽわぁぁ……。


中から現れたのは――


小さな光の精霊。


シチュー色。


丸い。


湯気みたいなしっぽ。


ショウタ。


「また増えた!?」


精霊はふわふわ飛びながら、


ぺこりと頭を下げます。


『ありがとう』


声は小さいけど、


すごく温かい。


サヨが目を丸くしました。


「鍋の精霊……?」


エルドランが優しく笑います。


『永遠のシチューの“心”じゃな』


精霊はピースケの前へ飛んできました。


『あなたが、思い出させてくれた』


ピースケ、きょとん。


「何をですぅ?」


精霊はふわっと笑います。


『料理は、“誰かを止めるため”じゃない』


『また歩き出すためのもの』


静寂。


エルドランが目を細めました。


『……そうじゃな』


昔の賢者は、


少しだけ寂しそうでした。


永遠に一緒にいられる場所を、


どこかで作りたかったのかもしれません。


でも。


ピースケたちは進み続けた。


迷って。


転んで。


笑って。


また集まって。


そしてごはんを食べる。


その繰り返し。


精霊は鍋へ戻る前に、


小さな光をみんなへ分けました。


白もふには、


“いつでもおいしいごはんを見つける力”。


ショウタには、


“疲れた時でも笑える力”。


サヨには、


“迷った時に人を信じる力”。


クロックとリバースには、


“同じ未来を歩く時間”。


巨大猫には、


“昼寝がちょっと気持ちよくなる力”。


『増えてる!?』


夜の龍には、


“静かな夜を楽しむ力”。


そして。


ピースケには――


小さな銀のスプーン。


シンプルなスプーン。


でも触れると、


ほんのり温かい。


精霊は笑いました。


『また誰かと食べる時に使って』


ピースケは大事そうに受け取ります。


「ありがとうございますぅ。」


その瞬間。


時霧の谷に、


夕日が差し込みました。


長い冒険の終わりみたいな、


でも。


また次が始まりそうな光。


ショウタが空を見ながら言います。


「……で、次はどこ行く?」


静寂。


すると。


遠くの空から、


ものすごい勢いで誰かの声。


『たーーーすーーーけーーーてーーー!!』


全員停止。


ショウタ、ゆっくり顔を覆います。


「終わらねぇぇぇぇ!!」

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