表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一話『転生と女体化』


 転生した瞬間、何かが無いことに気づいた。ち◯ちんが無い! は、え? 


「俺、これからどうすればぁ……」


 これが、後々英雄と呼ばれる俺の地獄の始まりである。


 遡ること数時間前――


「バイト…疲れた〜。繁忙期とはいえキツイな」


 肩が重く感じる。十九歳のピッチピチの男子大学生であるが、最近忙しくて、足がうまく上がらない。


「家に帰ったら、ゲームの続きでもするかぁ」


 いつも通る道をいつも通りに歩いていた。何一つ変化のない平穏が好きな俺にとって、ぴったりな日常だ。

 だけど、今日は違った。

 俺はいつも通りに横断歩道を渡ろうとした瞬間、車のクラクションの音がした。

 その音が耳に入り、その意味に気づくときには時すでにお寿司。

 俺の体は宙を舞っていた。バク宙するかの如く――やったことないから分かんないんだけどね。

 頭から血が噴水のように吹き出し、俺の意識は途切れた。

 


◇◇◇◇◇


 気づくと、真っ白な空間に立っていた。数メートル先には、見とれてしまうほどの美女が、黄金に彩られた高価そうな椅子に肘を立てて座っている。


「……ええっと……あの……ここは一体?」


 ぎこちなくその美女に話しかけた。

 生まれてこの方十九年間、女性と話すときは「あ」や「うん」しか言ったことがないが、なぜか今は自然とそれ以外の言葉が出た。


「うん……あ、あぁ……めんごめんご。存在感薄すぎて気づかなかったよ。まぁでもすでに死んでるから物理的に薄いんだけどねぇ。ハハっ!」


 ん? いやいい。聞かなかった。多分聞き違いだな。そうでないと困る。


「ええっと……ここは一体?」


 再度、同じ問いを投げた。


「ん? ここは多世界の狭間だよ」


 イマイチ要領を得ない……多世界の狭間ってなんだ?


「あんましよく分かんない? あれ? 車に頭ごといかれておかしくなっちゃった?」


 なんだこいつ。先ほどは聞き間違いだと思ったが、明らかに俺のことを馬鹿にしてやがる。

 いやいや、冷静になれ……冷静に――

 ん?

 美女の最初の発言が脳裏をよぎる。


「how? 俺、死んでるの?」


「あ……気づいてなかった感じ? 君はさっき車に派手に轢かれて死んだんだ」


「死んだのか……」


 両親はすでに他界している。何もあそこに残すものはない。少し寂しいが……


「俺、本当に分からないんですが、ここは一体どこなんですか?」


「ここは多世界の狭間。転生する世界を選べるところだよ」


「転生する世界を選べる?」


「うん。ただ、何でも自分の都合のいい世界に転生できるわけじゃないんだ。君の前世の人生に適する世界をこちらで三つ用意して、そこから選ぶって感じ〜」


「その三つとは?」


「うーんと、これ」


 美女が合図すると、俺の目の前に三枚の紙がどこからともなく現れた。紙にはこう書かれていた。


 1つ目の世界――極寒の世界。年がら年中魔物が襲ってくるよ⭐︎ 今までの転生者の死亡確率、なんと95%だよ⭐︎

 2つ目の世界――灼熱の世界。毎年世界大戦が起こってるよ⭐︎ 今までの転生者の死亡確率、なんと100%だよ⭐︎

 3つ目の世界――女の子しかいない世界で魔王がいる世界だよ⭐︎ 今までの転生者はいないよ⭐︎ 転生するなら、魔王を転生後20年以内に倒さないと魂が壊れるよ⭐︎


 毎回最後に星が付いてんの腹立つなぁ。てか、難易度高くない?! 消去法で三つ目しか無いような……


「三つ目で……」


「ファイナルアンサー?」


 もう一度考えよう。三つ目、女の子しかいないってまんまその通りなのか……? かなり地獄だけど、いやむしろ天国……? 魔王を20年以内に倒さないといけない。でも他二つよりはマシだよな……


「はい」


「おっけぇー。あ、ちなみに肉体は君の前世のまま転生するよ。あと、最近、転生者特典ができてさぁー、この三つから選んで」


 俺の脳内に情報が直接流れ込んできた。三つの能力説明だ。


 1つ目は……自分と同じくらいかそれより小さいものをコピーできる能力……

 2つ目は剣を作る能力……

 3つ目は蚊を操る能力……


 なんか最後だけショボいな。一が無難か。


「一でお願いします」


「おっけぇ〜……よし、準備できたよぉー。じゃあレッツゴー」


 俺の足元に魔法陣が現れ、美女が何かを唱える。その瞬間、魔法陣に吸い込まれ、気づけば俺は森の中に立っていた。

 なんとも言えない高揚感が俺を包む。ファンタジーの世界に転生したのだと。だが、俺は自分に違和感を覚えた。

 なんだ。何かがない。というか胸がキツイ。恐る恐る自分の体を確認する。無いッ! ち◯ちんが無いッ! あれ……もしかして……

 そこで気づいたのだ。俺は女の子になってしまったことを。


「何で? え、そんな……女の子になるなんて書いてなかったじゃん」


 三つ目が他二つに比べてパンチが弱いなとは思ったけどさぁ!


「俺、これからどうすればぁ……」


◇◇◇◇◇


「よいしょっとぉ〜。さっきの死者送りの仕事、不備ないか確認しとこぉ〜」


「あ、やべ」


 彼女は気づいた。さっきの死者に渡した紙に不備があったことを。三つ目の世界についての説明で、最も重要な部分が抜けていたのだ。


「えっとぉ……元の文章は『三つ目の世界――女の子しかいない世界で魔王がいる世界だよ⭐︎ 今までの転生者はいないよ⭐︎ 転生するなら魔王を転生後20年以内に倒さないと魂が壊れるよ⭐︎』……までは同じ……足りないのは、えー、転生するのが男なら女体化するよ、ってことと、それに加えて色々とヤバァイ人ばっかりの世界だよ⭐︎ たまに常識人がいるよ⭐︎ か……ま、まぁ〜一人だけだし、バレなきゃいいよねぇ〜。気づけて良かったぁ〜」


 こうして、後々英雄と呼ばれる俺の地獄が始まったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ