第7話 母親と障害
顔合わせ当日、予約した和食屋の料亭前で娘である一葉の彼の家族を待つ。
ここだけの話、お店を予約するのも大変だった。娘の彼が食べられないもの、いや食べたくないものといった方がいいだろうか、より好みがありお店を決めて彼に連絡してはコレが食べられない、アレが食べられないと言われ、娘は酷く大変そうだった。
そもそも、それだけ好き嫌いがあるのならば
、自分1人でお店を決めたらいいじゃない、好きに選びなさいよ、店選びだけでなぜ娘がこんな苦労しなければいけない?と、心の中でイライラした。
彼もお店を選んではいたそうだが。
顔合わせをする料亭で、予約した時間を5分ほど過ぎたころ、娘の彼の家族がやってきた。彼と彼の父親は体型がそっくりだ。彼の妹さんはほっそりとスタイルが良く、違った体型をしていた。
今日は離婚した母親も来るはずだったが、姿はない。お互いに挨拶を軽くし、店内へと入り席へつく。
娘が話していた通り、彼の父親は事務的な会話はするものの、あまり話のラリーが続かない。
こう言ってはなんだが、親子そろって、、といった印象だ。
もし、仮に娘が結婚をしたとして、これからこの家族とやっていけるだろうか?と、不安ばかりが募る。
食事も終わりそろそろ時間ですね、と両家とも帰り支度を始めた。支度を終え夫と娘と店を出ようとしたとき、女将さんからお部屋にお忘れ物がありますと呼び止められた。
忘れ物がないようきちんと確認したはずなのにと、いぶかしながらも、相手方のご家族にすみません先にお帰りください、と会釈し、夫と娘は店先に残し私のみ女将さんの後について戻る。
女将さんについていくと、先ほどの個室とは別の個室へ案内された。
「どうぞお入りくださいまし。」
女将が個室のドアをゆっくり開けた先には、1人の女性が立っていた。
状況が読み込めない私に、女性がこちらに近づき軽く会釈をする。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。娘さまとお付き合いしております息子の母、藤本美代子と申します。本日は同席できず申し訳ありませんでした。」
再度、深々とお辞儀をする。
よく見ると、スラっとしていて娘の彼とは体型は真逆である。
「不躾ながら、もし・・少しでもお時間がございましたら、少しの時間お話をさせていただけませんでしょうか?できれば、娘さまもご一緒に・・。」
娘の彼の母からの急な申し出に、困惑する私。
「失礼ですが、話があるのならば先ほど同席すれば良かったのではありませんか?」
今からこんな形でまた時間を取られるのは、正直・・という思いもあり、初対面にも関わらず冷たく言い放ってしまった。
「おっしゃる通りかと思います。大変申し訳ありません。」
深々と頭を下げる、娘の彼の母。
聞けば、ここの料亭の女将とは顔見知りで、今回は無理を言って事前に計画していたとのこと。
なぜ、そんな回りくどい方法をとってまで、私たちに接触してきたのか。
「では、夫と娘を待たせておりますので。失礼いたします。」
私は相手の顔を見ず、冷ややかに言い放ち個室を出ようとドアに手をかける。
「先ほどの会食の場で、息子から障害のことを聞きましたか?」
娘の彼の母親が、少し低いトーンで、でもハッキリと言う。
驚き振り返る私。
「息子は、発達障害のADHDです。」




