第2話 食べられない
数日後、娘の一葉が週末に彼氏を自宅へ連れてくることになった。夫と私はやっと会えると楽しみと緊張とで胸が高鳴る。せっかくなので食事ができたらいいねと夫と話し、昼食を一緒に食べるのはどうかと相手に話してみてほしいと娘に伝えた。
娘もお母さんのの料理は美味しいし自慢できるし!と、彼に聞いてみるねと笑顔でこたえてくれた。
食事は何を用意しようか。腕によりをかけて得意なビーフシチューでも?でも張り切るのもなんだし、と、自然と笑みが溢れてしまう口元を指で抑えてなおしながら、週末何をつくろうかと楽しみにしていた。
娘が仕事から帰ってきたので、週末の食事の件を相手に聞いてくれたか尋ねた。
「うん、彼はいいって言ってたよ。」
娘は先に食卓についている夫にただいまと言い、私のつくった夕食を美味しそうと席につき食べ始めた。
彼はなんの料理が好きなのか、娘に聞いてみた。
「う〜ん。なんだろう、ご飯は好きだよ。」
娘はお箸を持つ手を顎にあてながら少し考え込むように言った。
男の子はご飯が好きだものね、ご飯が好きならば、とここぞかばかりに得意のビーフシチューを出してもいいか聞いてみた。
夫もビーフシチューはいいね、絶品だしこれは楽しみだ、とニコニコと頷く。
「あ・・でももしかしたら、彼お肉あんまり食べられないかもしれない。」
娘はニコニコしている私達から少し視線をずらし言いにくそうに話す。なんだか表情が少し暗い。
夫と私は顔を見合わせ食事の手を止めた。
え、あ、そうなの?アレルギーとか?
そうだ、今の時代食べ物にも気を遣わなければいけなかったわ、と舞い上がりすぎていた自分をおさえなければ、と私は娘に聞いた。
「んー・・アレルギーとかじゃないんだけど、なんかあんまり好きじゃないみたい。」
娘は考え事をするように斜め下を見ながら話す。
なんだか歯切れの悪い娘の回答にモヤっとしたものを感じながら、
まぁ好き嫌いはあるものね、と私はビーフシチューはやめておくねと伝えた。
お肉が好きじゃないならなんだろ、魚?なら大丈夫?
娘に魚料理を提案すると、
「魚も食べられることは食べられるけど、匂いがきつかったり西京漬とかなんかそういうのは無理かも。塩焼きとかシンプルのなら食べられるかも。あ、でもなんの魚か、によるかな・・。」
娘の話が頭に半分入ったかどうか、私の頭がフリーズしてしまったのか、頭が働かなかった。娘の言っている話がほとんど受け取れない。
え?それは魚が食べられると言えるの?結局どうやったら食べられるの?なんのお魚ならいけるの?
矢継ぎ早に娘に聞く。胸中のモヤッとしたものがモヤモヤと広がっていく。
私の顔にもそんな胸中が反映されていたのか、娘は私の顔を見て、とりあえず彼に何食べたいか聞いておく、と少し不機嫌そうにし食事半分で席を立ち自室へ戻って行った。
私と娘の話を静かに見守って聞いていた夫は、不安そうな顔をしているであろう私を見て、また明日、一葉に詳しく聞いてみよう。と私の手をにぎった。夫も不安が拭えないそんな表情をしていた。




