第9話「関所前のウワサ話」
狂気が増幅させられた。それは1つの無垢を中心に全体に広がっていく。その狂気の大円は無垢を囲み、熱を帯びていく。その熱は段々とその範囲を縮め、更にそのボルテージを上げていく。その熱が無垢を呑み込もうとするその瞬間、箱は開かれる。箱は熱を奪い、全てを無に返す。無垢はもう既に無垢ではない。その灰色の誕生に世界はため息をついた。
——はい。出来上がりと…
「ようやく見えて来た。あの町に僕らの仮拠点がある。」
「結構大きな町だね。」
「ああ、結構活気もあっていい所だよ。」
「おお〜何だかワクワクしてきたよ。」
雑談を交えつつ、歩を進めると関所に並ぶ列が見えて来た。
「思ったよりも人が多いな。何かあったのか?」
「いつもはこんなに人はいないの?」
「いつもってほど何度も来たわけではないけど、今までよりもずっと多いな。話を聞いてみようか。」
そういうと、ハイネは列の最後尾にいる、犬の様な耳をピンと立てた獣人に話しかけた。
「…何だ」
「いや〜、思ったよりも人が多いですね〜」
「ああ…そうだな」
「誰かのお祝いか何かですかね〜」
「チッ…そんな訳ないだろ…町の近くで小規模ながら魔力クレーターが見つかったんだ。」
「魔力クレーターですか。となるとその原因を警戒しているって訳ですか。」
「ああ、もういいだろ。」
ハイネは会話を終えるとニコニコしながらコチラに向かって来た。
「どうやら近くで魔力クレーターが発生したらしい。」
「魔力クレーター?」
「ああ、アレクは知らないか。魔力クレーターっていうのはね、周囲の魔力素が吸い上げられた結果、大地が平らに凹んでしまう現象だよ。」
「魔力素が吸い上げられるって、どうしてそんなことが起こるの?」
「うーん、原因は今も不明なんだけど、伝承によると魔力クレーターの発生とともに魔人が現れるとされてるんだ。まあ大抵魔人なんていないんだけどね。」
「魔人て危険なの?」
「魔人はね、強力な魔法行使によって人々を狂わせ、最後は集まった狂人たちを無に帰すなんて言われてるかな。でも、魔力クレーター発生時に魔人が見つかった事もないし、そもそも魔力クレーターの発生を直接見た人自体がいないんだけどね。」
「ふーん、あくまでも伝承の中の存在ってことなんだ?」
「いや、魔人自体はいるよ。」
「え!?魔人いるの!?」
「いるよ、いる。だからこそのこの警戒さ。」
「なるほど…」
(いるのか!魔人!何となく怖いな。遭遇したら、何の抵抗もできないまま殺されてしまいそうだ…)
「だけど…」
何かを言いかけたハイネの言葉を遮り、関所の男が我々を呼んだ。
「次!貴様ら!」
「魔人ね…」




