第8話「ガンバラ煮」
段々と鍋から湯気がたちのぼり、いい匂いが立ち込めて来た。そういえば鍋はどこから取り出したんだ?それに炎らしきものが見当たらないな?今はお腹が空いてるし後で聞くか。使われているのはウサギの肉と魔粉と水だけの極めてシンプルな料理だ。しかしそのシンプルな具材からは想像できないような、複数の香辛料が複雑に混じっている様な香りがする。スパイシーさ、香ばしさ、清涼感、そして何とも形容しがたい独特ないい匂い。これはあれだな。子供舌の俺が大好きなあれだ!
「これカレーだ!!!」
「カレー?」
「ああ、突然ごめん。懐かしい故郷の味を思い出してしまってつい」
「アレクの故郷でもツノウサギのガンバラ煮みたいな料理があったの?」
(ガンバラ煮?まあこの料理名なのだろう。)
「うん。同じ匂いなんだけど、俺の知るカレーは豚や鶏の肉と野菜を加えて、スパイスで煮込んだ料理なんだ。」
「じゃあガンバラ煮とほぼ同じね。肉は大体ツノウサギだけど、普段は野菜も追加してパンを浸して食べるの。」
そこからは、ステラがいかにガンバラ煮が好きなのかを語り、本当は野菜とかも入れた豪華なものにしたいけど、我慢してシンプルにしているとか、野菜は中々手に入らないから贅沢なものであることを教えてもらった。その間、ハイネは聞き飽きているのか、どんよりとした雰囲気でいた。
「完成だよ。2人とも。」
「待ってました!」
「アレクもステラ同様にガンバラ煮が好きなんだね〜」
「いや、ステラほどではないと思うけど、よくカレーは食べていたよ。ハイネはどうなの?」
「どうなのって聞かれても困るけど、俺はあまり食べないんだ。」
「え?何で?」
「僕には少し辛すぎるんだ。それに作るのが…」
「あ〜辛いのは苦手なんだ?」
「いや、大抵の人間は…まあいいか。よそえたから、頂こう。」
「「「頂きます!」」」
うう…なんだこれは!見た目は完全にカレーだ。しかし以上に辛いぞ。唐辛子でもないのにこの辛さ。凄まじい。某辛いタンメンや某ヤング焼きそばの辛いやつくらい辛い。
「むぅ…う!…ぷはぁー!」
「大丈夫か?ハイネ」
「やっぱり辛いね。僕辛いのはあまり得意ではないんだよね〜」
「ハイネは大袈裟なの」
「いや、これは俺からしても大分辛いよ。ステラは平気なの?」
「平気」
「凄いな。でもツノウサギのお肉はとても美味しいな。何だろう、鶏っぽいけど、もう少し旨みが強いね。」
「ツノウサギのお肉は絶品なの。」
そういうと、手が止まる俺とハイネを横に、ステラはテキパキと食べ進めた。そして俺らの器が空いたら即座に大量のガンバラ煮をよそってくれた。ああ、お尻が心配だ…




