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ホット・ミール  作者: 灯坂ゆいら


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第4話「星の下」

夢中で走った。肺が寒い空気に乾燥し、出血してしまうのではないかと思うくらい全力で走り続けた。長い距離を逃げるなら、ペースを守り筋肉が硬直しない程度の力で走るべきかもしれない。しかし、後ろからあの冷たい2本の刃が首にあてがわれているような妄想が頭から掃き出すことが出来ず、自然と足に力を込めすぎてしまう。


なんだよ!なんなんだよ!こっちに来てから災難ばかりだ。俺がなにかしたかよ!理不尽だよ!いや世界なんてこんなものか。理由あって、原因あって不運がやってくるわけではない。分かってる。分かってるけど、期待してしまうじゃないか...あと1キロぐらい走ったら、もう奴は俺を諦めるかもしれない。いやもはや、俺を追いかけてくる人間なんてもういないかもしれない。そうだ。きっとそうだ。もう少しだけ走ったら、いったん休憩しよう。休憩したらまた走ればいい。もう少しだけ走ったら...


思った以上に長い距離を走り続けている気がした。その間、ああでもない、こうでもないと女々しい考えとそれを許さない蛮勇がぐるぐるとループした。結局何かの理由がない限り走ることは辞められない。初めて感じた死の恐怖は、俺が休むことを許さなかった。


しかし俺の足は程なく止められた。ずっと続いていた木々が途切れたのだ。景色が変わったことで、少し状況が変わったと楽観的にそう思った。実際、木々の中よりも開けた道ならば、不意打ちの可能性は激減する。敵が見えていないという恐怖は解消された。そこでようやく俺は走る足を止め、その場に大の字に寝転んだ。きっともう大丈夫だ。こんなに頑張ったんだ。きっと状況は良くなっていく。


「君、星が好きなの?」


鈴のような声がした。咄嗟に上体を起こし、声の主を見た。その子はは灰色の顔に銀髪の髪を持つ少女だった。その子はこちらの顔を覗き込むように見ていた。俺は咄嗟の出来事に全身が硬直していた。


「邪魔しちゃった?」

「いや、別に。大丈夫です。突然のことで...」

「そうなんだ。」


彼女の見た目はセバスを襲ったあの男と同じ特徴だった。しかし、何故か恐怖心が薄らぎ、何故か安心してしまっていた。心拍も落ち着いてきたところで、何となく星を見上げてみた。

「私、星が好きなの。」

「星が?」

「うん」

「どうして?」

「星はね。私をいつでも見てくれているから。」

「星が見ている?」

「そう。星はいつでも私を見ている。私を一人にしない。だから好き。」

「君は星に見られていると安心するの?」

「安心?うん、星は私を安心させる。一人は寂しい。」


寂しいと口にした彼女はそのまま死んでしまうのではないかと思うくらい弱弱しかった。

「そうだね。孤独は死に至る病だからね。」

「病なの?」

「僕の生まれた場所では病らしい。」

「そうなんだ。」

一緒になって自分まで、弱々しくなってしまった。待て待て!せっかくゆっくり話してくれる人間に出会えたんだ。どうせなら、喜んでもらいたい。


「でも、いまは一人じゃないから。孤独ではないね。」

「孤独じゃない?」

「そう!今は俺がいるから、君は一人じゃない!」


安堵と恐怖からの解放で、少し変な感情になってしまった。言った後に恥ずかしいことを言ったことに気づいた。


彼女はキョトンとした後に、嬉しそうに笑った。そんな彼女を見て、俺も嬉しかった。この世界に来て初めての喜びだった。

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