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王花  作者: 小野島ごろう
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鬼っ子8

 コロニーでは。


 日当たりが良く、しかも水場に近い場所をめぐって、なにかと小競り合いが起きるようになった。

 条件のいい場所を手に入れると、そこを守らねばならない。

 動かされないように、足を深く地面に埋める者も現れた。


 

 ある時、地面に埋めた足先から、地中の水分を摂取できるようになった者が現れた。

 

 それは、その場を動かないことの利点が、移動できる利点を、上回った瞬間だった。



 その変化は、あらゆるコロニーで起こっていた。

 さらに何世代か重ねると、根が生えた者が主流になり、普通になっていった。


 根は、どんどん伸びて、地中に浸透した水を存分に吸収できるようになった。




 動かなくなった人々は、動物を使うことを考え出した。


 遠隔地の連絡には、モノマネ鳥を使う。

 モノマネ鳥は、長い口上には使えないが、速いし、短い内容なら、そこそこ正確に伝達できる。

 緑の人々が脇の下から分泌する、甘い汁目当てに、この鳥はよく働いた。


 物を運ぶときは、シカを使う。

 シカには、体の一部を食べさせる。

 食べさせても、いずれ修復できるのだが、痛いのは痛いので、滅多なことでは使わなかった。








 さて。


 ばあさんたちから逃げてきたヒカリは、何よりも、師匠の解説が欲しかった。


 

「みんなお前の価値を認めざるを得なくなったということだ。

近いうちに必ずそうなると、わたしは思っていたよ」



「どういうこと?」


「今までは、根を深く張った方が、なわばりを守ったり、水脈を守ったりするのに都合がよかったんだ。

だが、近年の気候不順は、どうやら一過性のものではないらしい。

ということは、移動する方がよさそうだ、ということを、みなが認めたんだ。

いやいやながらね」



「それで、おれに、なにを頼もうとしてたんだろう?」



「東の山に、死神がいる、といううわさを聞いたことがあるか?」

「いいや。

なにそれ、死神って?」


 思ってもいなかった言葉に、ヒカリは思わず噴き出した。

 が、師匠は大真面目だ。


「わたしは魔女と言われているだろう? 西は魔女。

東は、死神と呼んで、区別しているらしい。

……わたしの、ふたごの姉だ」


「えっ?」


 師匠がふたごだったなんて、初耳だ。



「姉は、何もかも分解して調べるのが好きだ。

植物も、動物も、生きている物も、生きていない物も、何でも」

「……」


「その姉が、近ごろ、嬉しそうに話していた。

飛び跳ねる、大きい、美しい緑のバッタを、もうすぐ解剖できそうだって」


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