鬼っ子5
「ふうん……」
つまらなさそうな返事をしたが、その実ヒカリは、鳥肌が立つほど感動していた。
崩れそうにもろく醜い器の中で、ゆっくりと醸成された高い矜持を、子どもながらに感じ取ったのだった。
この人は、特別なんだ。
ヒカリの知っている大人たちとは、話し方も話す内容も、まるで違う。
難しいことも、いろんな秘密も、知っている。
それに、ヒカリを子ども扱いしない。
周りの大人たちといえば、ヒカリが質問すると、はぐらかしたり怒ったりしかしないのに。
しかし、突然ヒカリは空腹に気づいた。
日光が足りない。
日が落ちる前にもう少し日光を浴びないと、夜の間空腹で眠れなくなってしまう。
「あんたの名前は、なんていうの?」
ヒカリは、魔女にきいた。
「……親がつけた名前は、使わないことにしている」
魔女は、目を伏せた。
「じゃ、えーと、師匠、って呼んでいい?」
魔女は、目を上げて、青い宝石のように輝かせた。
顔はほんのりと赤らみ、あごのあたりに深いしわができた。
新しい呼び名は、許可されたらしい。
「師匠、また来るね!
いろいろと教えてほしいことがあるから!」
ヒカリは師匠からいろいろと学んだ。
一番知りたいことは、なぜ自分は、みんなと違うのか、ということだった。
「星が並ぶ夜に仕込まれた子は、異形として生まれる、という言い伝えがある。
だから、どこの族も、その夜は交接を禁じている」
「じゃあ、おれの親は、禁を破ったの? なんで?」
「それは、本人たちにしかわからない。もう、聞くこともできないから、しかたがない」
「なんで、おれの親は、もう死んじゃったのかな?
みんなもっと、長生きなのに。
ばあさんたちなんか、まだまだ生きそうなのに」
「お前たちのカタバミ族と、マツヨイ族は、コロニーがかなり離れている。
ランとトキがどうやって知り合ったかはしらないが、二人が会うためには、根を抜かなければならなかっただろう。
根は、二、三回も抜けば、それだけで死んでしまうほどのダメージがあるものだ。
根を抜いて、逢引の場所まで、這ったのか、杖を使ったのか、なんとかたどり着いた。
そしてまた、自分のコロニーまで戻り、お前を身ごもって、産んだ。
まさに命がけで、お前を生んだんだよ」




