マムシ5
マムシは、洞窟にこもった。
タケルが言い残した書物を読みこみ、関連する他の書物も、次々に読破した。
タケルのおかげで、検索が楽だった。
またマムシは、太陽を避け、生来の姿を隠すために、フード付きのマントを作った。
それから、「塔」を調べに行った。
塔には二重三重の守りがあったが、試しにシカを通らせたところ、だれも邪魔しなかった。
マムシは、シカの腹にしがみついて、塔にたどり着いた。
「塔」は、生きていた。
全てを知り、見通し、しかし、孤独にさいなまれていた。
マムシは、三日三晩、塔と話し込んで、協力関係を結ぶことに成功した。
塔は、これから起こることを予言した。
だから、星が並ぶ夜に恋人たちが交接する様子を、マムシはすぐそこで観察していた。
その結果生まれてきた子どもたちの姿も、予言通りだった。
白い肌の子どもがシカの背にくくりつけられて、マツヨイ族のコロニーから出ると、マムシはその後をつけた。
好物を与えると、シカはすぐになついた。
マムシは前と同じようにシカの腹にしがみついて、塔にたどり着いた。
マムシは白い子どもを抱き上げ、シカを放した。
子どもは、愛らしかった。
しかし、マムシにとっては、その稀少な価値の方が大事だった。
この子どもから、新世界が生み出されるのだ。
だから、「カオス」と名付けた。
子どもは、塔に大切に育てられた。
塔は、鳥獣たちを意のままに操り、木の実や虫、小動物などを獲ってこさせた。
初めは、塔が自分の身体を通して液体にした栄養をとらせた。
少し大きくなると、砕いた固形の食べ物を与えた。
マムシは、時々様子を見に行った。
遊び相手になったりしたが、名前の他の言葉は、あえて教えなかった。
カオスは、生まれたての赤子のままでよい。
知恵などつけてもらっては困る。




