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少女8
師匠は、うっすらと笑った。
その笑みがわかるくらい、室内を白っぽい明るさが満たし始めていた。
そろそろ夜明けなのだろう。
少女はよく寝ている。
ぴくりともしない。
自分と少女が交わることが、そんな大事件なんて、とても信じられない。
しかし、いままで起こった残酷な事柄は、虚構でも悪夢でもなかった。
ヒカリは、ぞくぞく寒気を覚え始めた身体を抱きしめて、強がった。
「世界、世界って、なにがどう、変わるんだ?」
「昔からの、古い詩がある。
おまえは聞いたことがあるかどうか」
師匠は、きれいな声で歌い始めた。
宝玉の星々の珍しき夜
秘蔵の種、滴りぬ
高き塔の秘したる白き花
そは麗しき
そはかぐわしき
山河を越え、敵を蹴散らし、勇者現れぬ
高き塔、勇者に開きぬ
勇者、白き花を手折り、胸の内に抱きし時
怒涛、大地を洗い、火焔、全てをなめつくす
新しき大地に、新しき種、降り立ちぬ
「そんな歌、知らない。聞いたこともない」
ヒカリは、ぼそっとつぶやいた。
「おまえの、つくりごとだろ?」
「まあ、おまえがどう感じようが、別にどうでもいいが」
師匠は、にやりと口をゆがめた。
「まだ気づかないか?
おまえたちにはすでに新しい命が宿った。
その子ー王花ーこそ、新しい世界の主人となる、全く新しい人類の祖なのだ」




