少女7
「守る?
……ああ、そうだな。守っていたんだよ、おまえから」
「おれから? なぜ?」
「わかるだろう? この数日間の、おまえたちの睦み方といったら!」
ヒカリは、顔が熱くなるのを覚えた。
「それは、そいつが……」
もごもごとつぶやくと、
「カオスは、ひたすら待っていたんだよ。
カオスの生きる理由は、おまえに愛されることだから」
師匠は、愛おしそうに、少女の白い額を撫でた。
「……想像してごらん。
来る日も来る日も、同じ部屋、同じ光景の中で、たった一人、話し相手もなく。
毎日が同じ。毎日が、とてつもなく長く、わびしい。
おまえの方がここに閉じ込められていたら、『守られている』などとありがたがるか?」
ヒカリは、うなだれた。
「いや……」
風と日光を受けて、駆け抜ける、丘や草原。
足元からあわてて飛び立つ、虫や鳥。
川のきらめき。こもれび。柔らかそうな雲。恵みの雨。
大地のぬくもり。赤く燃える空。光る砂をまき散らしたような、高く遠い夜空。
仲間たちの、笑い声や歌い声。たあいないうわさ話。
「かわいそうだと、思う。
でも、こいつをここに閉じ込めたのは、おれじゃない。
おとなたちだ」
ヒカリは、うなずく。
師匠はまるでおれが悪いように言うが、おれはただ、ここに連れてこられただけだ。
交接だって、無理やりしたんじゃない。こいつの求めに応じただけだ。
「やつらはなんでこいつを、塔に閉じ込めたの?」
「世界を、変えるからさ」
はぐらかすような、あいまいな物言いしかしない師匠に、ヒカリは腹が立ってきた。
「世界を変えたのは、おまえだろ?
人を大勢殺して、巨人を放った!」
「おまえを、ここに連れてくるためだ」
「なぜ?」
「世界を、変えるために」
ヒカリは、頭の中がこんがらがってきた。
師匠は、おかしくなったのか?
そうかもしれない。
それなら、一気に説明がつく。
「ヒカリとカオスが交われば、新しい世界が生まれるのだよ」




