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王花  作者: 小野島ごろう
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少女5

 出口を探そうと、少女に背を向けた時。


「伴侶に、その態度は感心しないな」


 師匠の声が、降って来た。


 ぎくりとしてヒカリが見上げると、先細りになった暗がりの中から、ひたひたと逆さまに壁を這い下りる、なお濃い影。


 ヒカリは、かっとなりかけたが、こらえて、顔をそむけた。


 ヤモリみたい。気味の悪いやつ。

 あんなやつ、もう、師匠でもなんでもない。



 本当は殴りかかりたいところだが、力でも敵わないことはわかっている。

 せいぜい無視するくらいが、ヒカリにできる精一杯の抵抗なのだった。



「おまえは、意外と卑怯なやつだったのだな」

「あんたに、言われたくない!」


 だがヒカリは、思わず言い返してしまった。

「あんたは、最初から最後まで卑怯じゃないか!」


「おまえは、わたしの考えを、尋ねもしなかった。

おまえが勝手に、わたしのことを、完全な自分の味方と思いこんでいただけだ」




 師匠は、壁の高い所からすとんと飛び降りて、少女を助け起こした。

 辺りが暗いので、師匠が今、どんな色をしているのか判別できない。


「大丈夫か? ケガはないか?」

 少女は、師匠にすがりついて、ヒカリを見つめてくる。

 目が、濡れたようにきらっと光った。


「かわいそうに。あんなに待ち望んでいたのに」



「……」

 ヒカリはいらいらしたが、黙って、壁を手で触りながら、出口を探し始めた。



「言っとくが、出口は、ないぞ」

「嘘をつくな。じゃあ、あんたはどこから出入りしているんだ?」


「わたしは、ほんの少しのすき間があれば出入りできるのさ。おまえは頭も通らないようなすき間でもな」



 そんなに広くない空間なので、ヒカリの調査はあっという間に終わってしまった。

 手が届くところには、長細い窓以外、扉や開口部らしいものはなかった。


 だが、師匠の言う事なんて信じられない。

 明るくなったら、また調べよう。



「この子は、おまえの、姉妹なんだよ」



 ヒカリは、耳を疑った。

 だが、一瞬の後、がばっとふり向いて、師匠をにらみつけた。


「嘘ばっかり、つくな!」



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