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王花  作者: 小野島ごろう
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少女3

 もつれ合い、からみ合い。

 手と足と、指と、髪と、首と、腰と。


 少しのすき間も作りたくなくて、お互いの身体をすり合わせる。

 離れないように、ほどけないように。


 脚が何本もある大きな虫が、身を守ろうとするように。

 固い岩盤に(はば)まれて育った、老木の根みたいに。


 夢とうつつを行き来しながら、どれだけ(むさぼ)っても満足しない。

 自分の命を注ぎ込み、恋人の命を余さず受け止め。

 中身がすっかり入れ替わるほどに。


 おれはおまえ。

 おまえはおれ。


 このまま、世界が滅んでしまってもかまわない。

 いっそ、滅んでしまえばいい。

 生の絶頂にある今ならば、なにもこわくない。






 ふと、すき間風を感じて、ヒカリはうっすら目を開けた。

 辺りは、暗い。

 夜なのだろう。

 寒さに、ヒカリはぶるっと震えた。


 少女はどこ?

 力が入らない腕で、なんとか身体を起こし見回すと、ちょっと離れて、背を向けて座っている。


「どうした?」


 ヒカリの声に振り返った少女は、手で何かを口に運んでいた。

 つかんだものを、歯の間に押し込み、引き裂き、かみ砕いて、飲み込んだ。


 ヒカリは、驚いた。



 口で、食べるなんて!



 少女はヒカリの凝視(ぎょうし)にも全く頓着(とんじゃく)せず、次々に口に何かを放り込み、咀嚼(そしゃく)している。

 果物や植物らしいが、ほかにもなにやら、異様な臭いがするものもある。


 ヒカリは呆然と見ていたが、だんだん気分が悪くなってきた。



 こんなこと、人間がすることじゃない。


 人間は、もう、他の生き物の命を奪わずとも生きられるようになったのだ。

 人間の口は、歌ったり、話したり、物語や詩をつむいだり、愛をささやいたりするためのものだ。


 こんなのは、下品だ。

 けものじみて、臭くて、汚ない。

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