支援者10
師匠が近づいてきた。
ひょいとヒカリを小脇に抱えると、崩れた岩を跳び伝い、岩穴から地上に躍り出た。
師匠はいつも、こうして助けてくれる。
でもそれは、目的のために、ヒカリが必要だから。
ヒカリは、師匠の腕をするりと脱け出して、まぶしい日光の中で深呼吸した。
自分がいままで、いかに師匠を盲信していたか。
腹立たしく、悲しく、みじめで、叫び出したい。
なにもかも、ヒカリのせい。
深く考えもせず、師匠の言う事を信じ切っていたヒカリのせいで、大勢の人が命を落とし、大切な家族までも死んでしまう。
「ほら、塔はもうそこだ」
師匠の声が弾んでいる。
師匠が指さす先に、奇妙にねじれた高い建物があった。
巨大なヘビが鎌首をもたげた様子を、土をこねて形作ったかのようだ。
澄んだ青い空を背景にしているのに、まがまがしさがにじみ出している。
「さあ、急ごう。
もしかしたら、巨人たちが戻って来るかもしれない」
師匠は、また歩き始めたが、ややあって、振り返った。
「ん? どうした?
疲れたか?」
ヒカリは、首を振って、きびすを返した。
カタバミ族を、守ろう。
巨人たちが来ると、知らせよう。
なんとか避難できるかもしれない。
間に合わないかもしれないけど、何もしないままではいられない。
ばあさんたちに、一目会えるだけでも、いい。
一目会って、謝ろう。
来た方向に歩き出したヒカリの前に、師匠が飛んできた。
「ヒカリ!
そっちじゃない、こっちだ!」
ヒカリは、師匠をにらんだ。
「こっき!」
「ははーん」
師匠は、にやりと口元をゆがめた。
「やっと、気が付いたか」
その声は、優し気な、死神の声。
見る間にオレンジ色の肌が、青く染まっていく。
それと呼応するように、青い目の色素が抜けて、オレンジ色に変化した。
ヒカリは、驚愕した。




