支援者8
まてよ。
おれはなぜ、話を聞かなかったのかな。
そうだ。
あらたまった調子で、これはお前にしかできないことだ、などと話を切り出されたら、警戒しろ。
聞いたら最後だから、聞いちゃいけないって。
そう、言われたから。
師匠から。
師匠は、それは、おれを死神に渡す相談だと言っていた。
だから、おれは、てっきり……
ヒカリは顔を上げて、師匠の方を見た。
師匠は、素早く岩壁に駆け上がった。
だん、と力強く岩壁を蹴飛ばして、天井にとりつき、また反対側の岩壁に飛び移る。
何回も、何回も、少しずつ位置を変えながら。
ふだんの姿からは想像しにくい俊敏な動きに、ヒカリは思わず見とれた。
見つめていると、師匠は、四角い光の枠を中心にして動き回っているのがわかった。
光の枠の内側に、だんだん、クモの巣のようなものが張られていくのが、ぼんやりと判別できる。
師匠は、あんなことをして、どうするつもりなのだろう?
そのうち師匠は跳躍を止めて、軽く弾んだ息を整えた。
自分が張ったクモの巣から垂れ下がった縄の端を手に取ると、マントの中から取り出した小さい壺の中にそっと落とし込んだ。
師匠がその場を跳び退った瞬間。
縄の端から火が走り始めた。
火はぼぼぼと音を立てながら、見る間に岩天井に迫る。
師匠が、マントをひるがえしながらヒカリに駆け寄ると、飛びつくように覆いかぶさってきた。
ヒカリは、師匠にきつく抱き込まれて、目を白黒させた。
「ひ、ひひょう……」
「動くな!」
があん、と、師匠の身体越しに、大音響が轟いた。
がたがた揺れる二人の身体。
がらがらっと大きく崩れる音に、ヒカリは身をすくませた。




