支援者7
「ああ、もうそこだ」
師匠が、弾んだ声を上げた。
師匠のそんな声音を聞いたのは、初めてだ。
師匠の指さす先の岩天井から、四角い線形に、光がもれていた。
地下道は行き止まりのようだ。
そこはいくらか広い空間になっていた。
あそこから、外に出られるんだ。
ヒカリは見回したが、その四角い光の枠の下には、階段もはしごも、なにも無い。
足場を作れそうな岩も転がっていなかった。
どうやって、あそこから出るんだろう?
ヒカリは、師匠を振り返った。
師匠は、周りを見回したり光を見上げたりしてしばらく考えている。
そのうち、
「あっちでしばらく待機していなさい」
ヒカリに指示した。
ヒカリは、おとなしく来た道を戻って、壁によりかかった。
ひんやりと、濡れたようになめらかだ。
師匠の口を思い出したヒカリは、急いで壁を離れ、膝を抱えてうずくまった。
さっきの続きを考えることにする。
雑食の巨人たちが、クサギ族のコロニーを通り抜けて、その外に出たなら。
ヒカリは、自分が通って来た道を思い返す。
ヒカリが何十日もかかって踏破した道のりも、巨人たちには、数日の距離だろう。
彼らだって、腹が減る。
沢山動けば、日光だけでは足りないかもしれない。
その時、何を食べる?
丘や、荒野や山。川。
その間に点在する、いろんな一族のコロニー。
巨人たちが、草でもむしるように、大地から人々をむしりとり、口に運ぶ様子を想像して、ヒカリは血の気が引いた。
巨人たちは、カタバミ族まで、来るだろうか?
来ないとは言えない。
来たら、もうおしまいだ。
足をなんとか引き抜いたところで、そう遠くまで移動できやしない。
年寄りなんて、あっという間に行き倒れ、しなびて、死んでしまうだろう。
ああ。
ばあさんたち。
あんな、けんか別れみたいにして、飛び出して来てしまった。
あれが、最後だったのかな。
もう二度と、会えないのかな。
ヒカリの胸がきゅうっと痛んだ。
でも、おれを死神に渡そうとしていたんだから。
いや、まてよ。
ばあさんたちの口から、直接、そう聞いたわけじゃなかった。
「ヒカリ、話を聞きなさい!」
チョウばあさんの叫び声がよみがえる。
今までは、おれを死神のところにやろうという話とばかり思っていたけれど。
本当に、そうだったのかな?
話を聞くだけは聞いても良かったんじゃないかな?
いやなことを強制されたのなら、それから逃げてもよかったのだから。
話って、本当は、何だったのかな。




