一人旅12
ヒカリは、クサギ族のコロニーに戻った。
アザミ族との境界近く、人影もまばらな野原で足を止める。
ぽつんぽつんと立っているクサギ族は、ヒカリを見ても知らんぷりしている。
そこら辺の虫か、小動物でも見るような無関心さ。
ヒカリは丈の低い草の上に寝転がって、無心に日向ぼっこを始めた。
風が冷たくなった。
日が傾き、アザミ族のずうっと向こう、西の果てにどんどん落ちていく。
空が真っ赤に焼けた。
やがて、天は一面、冷たく透き通った藍色に覆われた。
月はまだ見えない。
藍色の天蓋に開いた、無数の穴から、無邪気な気高い光がちらちらと漏れてきた。
そろそろ、行動した方がいいかも。
ヒカリ自身も、夜はあまり体力がもたない。
ゆっくりと立ち上がり、星明かりを頼りに、アザミ族のコロニーを目指す。
足の裏に、湿った草と土が冷たい。
草履はとっくに使い物にならなくなって捨てていたが、ヒカリの足の裏は、固く、丈夫になっていた。
アザミ族はまだ、頑丈な壁のように立っている。
遠目には、彼らが起きているのか寝ているのか、全くわからない。
短い草もまばらになって、身を隠すものが何も無い。
気づかれずに近づくのは、難しそうだ。
ヒカリは、四つん這いになって、ほんの少しずつ、近づいていくことにした。
まだ、だいじょうぶ。
またちょっと進んで、様子をうかがう。
よし、気が付いていない。
しかし、こんなことで、夜の間にアザミ族のコロニーを突破できるのだろうか?
途中で見つかったら?
考えてもしかたがない。
ヒカリは、肘や膝が痛いのを我慢しながら、這い進む。
その時。
うわあ、っと、ものすごい叫び声が、夜空に放たれた。
ヒカリは仰天して、思わず頭を抱えてその場にうずくまった。
見つかった?
しばらくじっと丸まっていたが、なにも襲って来ない。
どうも、様子がおかしい。
ヒカリは、おそるおそる顔を上げて、前方をうかがった。




