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王花  作者: 小野島ごろう
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一人旅11

 ぽつんぽつんと立っているクサギ族の間をのんびりと歩いて、アザミ族のコロニーを目指す。


 ここまで来たからには、もう、塔を目指すしかないよね。


 

 旅の終わりが可視化されたことで、ヒカリの気分は前向きになっていた。


 途中の泉で体を洗い、水筒もいっぱいにした。

 肌に触れる風は、少し乾いて、秋めいている。

 きもちいい。

 旅に出から、こんなに気分がいいのは、初めてだ。






 開けた平地の向こうに、びっしりと人が立ち並んでいる。


 あれが、アザミ族のコロニーだろう。


 もう着いた!

 なあんだ。楽勝だった!



 ヒカリはのん気に歩いて行く。




 近づいていくと、なにやらものものしい。

 なにかあったのだろうか?


 手前にずらっと並んだ人々が、みんなヒカリの方をにらんでいる。

 その奥にも、たくさんの人々がびっしりと隙間なく立ち並んでいるようだ。


 そこら中に、黒々とした剣呑(けんのん)な雰囲気が立ち昇っている。



 ヒカリの歩みはだんだん遅くなる。

 アザミ族の最前列からかなり離れたところで、ヒカリは立ち止まった。



 勇気を振り絞って、大声を張り上げる。


「……あのう、こんにちは。ここを、通してもらえますか?」



 アザミ族の人々が、一斉に身体を振りたてた。


 剣先のような髪が、天を突きあげる。

 顔にも手足にも、鋭い(とげ)が金属のようにきらめいた。


 地響きのようなうなり声が、質量をもって、ヒカリの全身をなぶった。



「だめだ!」

「帰れ! 帰れ!」

「通ること、まかりならん!」




 こんな圧倒的な力を前に、ヒカリに何ができただろう?

 ちっぽけで、やせっぽちで、非力な少女に?


 こんなにもたくさんの、立腹した大人たちを、どうやったら説得できるというのだろう?

 それとも、うまいことだまして、抜けていく? 

 そんな離れ業、少なくとも、ヒカリには無理だ。




「わかったよ」

 ヒカリは、さっさと回れ右をした。




 ……またあのクサギ族を抜けていかなければならないのか。

 それも憂鬱だが、仕方がない。



 とぼとぼと歩きだして、待てよ、と思いついた。


 いくら彼らだって、夜はさすがに動きが鈍いんじゃないか?


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