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王花  作者: 小野島ごろう
20/49

一人旅10

 ヒカリは、思い切り伸びをした。


 久しぶりに、夢も見ない深い眠りを堪能(たんのう)した。

 しばらくはその余韻を楽しんでいたが。



 えーと、ここはどこだったっけ?


 ……しまった!

 


 いろいろと思い出して、ヒカリはあわてて飛び起きた。




 するとすぐ横に、長が寝転んでいた。

 ヒカリは、さっと血の気が引いた。


 なにかされたんじゃないだろうか?



 寝ている間のことを思い出そうとしたが、なんにも思い出せない。


 あんなに落ち着いた年寄りのようにみえて、じつは、好色なんてことがあるだろうか?



 ヒカリは、おそるおそる長の顔をのぞき込んだ。

 目を閉じて、寝ているようだ。


 

 なあんだ。

 長も、眠かったのか。

 よかった、これでお互い様だ。



 それにしても。

 なんて大きな人だろう!

 こんなに成長するのに、何年かかるんだろう?



 長の頭から足元までずうっと視線を走らせる。

 長の身体の脇に、何かが落ちているのに、ヒカリは気が付いた。



 パピルスらしい。

 師匠のところにたくさんあったから、ヒカリはパピルスを知っていた。


 そうっと拾い上げ、丸まっているのを開いて見る。




 パピルスいっぱいに大きく、太い線で描いてあるのは、三重の円。


 一番外側の円と、二番目の円の間には、短く細い線がたくさん書き込んである。

 そのちょっとした隙間に、クサギ族とある。


 二番目の円と、一番内側の円の間も同じように細い線に満たされている。

 そこは、アザミ族。



 そして、真ん中の円の中心に、塔の絵。

 塔は、その周りを、ぐるりと人が守っている。

 

 よく見ると、塔の上には小窓があって、そこに星印がつけてあった。




 これは、明らかに、この先の大まかな地図だ。


 こんなに簡単な図なら、わざわざ持ち歩く必要はないが、図で見ると、ちょっと安心した。

 ここまでの道は、間違いなかったんだ。




 ヒカリは、パピルスを元の場所に戻そうとして、思いとどまった。


 これは、長の心づくしじゃないか?

 ヒカリが起きたら、これを持たせようとしていたのかも。


 だったら、持って行かなかったら、長は悲しむだろう。




 長が起きるまで待って、お礼を言おう、とは、ヒカリは思いつかないのだった。



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