一人旅8
「さあ?」
ヒカリは、長の前の空き地にごろっと寝転がった。
無作法だと咎められようが、かまうもんか。
どうせ、まもなくここを出るのだ。
そして、再び会うこともないだろう。
全身に日光が当たって、きもちいい。
ちょうど、寝る前に、もうちょっと日に当たっておきたいところだった。
体勢を低くすると、花の匂いの方が強くなって、肩の力が抜けてくる。
急に、どっと眠気が襲ってきた。
長は、怒る様子もない。
「お若いの。
一番恐ろしいのは、人生に使命が無いことなんだよ。
自分が、何のために生まれてきて、何のためにここにこうして生えているのか。
その意味がわからないことなのさ」
ヒカリは、焦点の合わない目を必死に見開こうとがんばった。
長の目と合ったような、合わないような。
何もかもがぐらぐらと揺れ始める。
「……べつに、意味なんて……どうでもいい……」
すうっと寝入ったヒカリに、長はかまわず話しかけ続ける。
「あんたみたいに、動き回れたら。
考える必要もなく、いつの間にか人生を終えられるのかもしれない。
あるいは、隣に愛しいひとがいたら、生きる意味なんて、自明の事だろう。
だが、同じ場所に、ずっと独りでいると、否応なく考えてしまうのさ。
なぜ、わたしはここにいるのだろう。
わたしは、何者なのか。
そしてわたしはいつまで、ここにいなければならないのだろう!?
どこのだれが、わたしの運命を決めているのか?
……こんなことを考えずにいられるのなら、わたしは、なんだってするさ!
人に忌み嫌われる仕事をありがたがるなんて、ばかだと思うかえ?
だが、だれかがしないといけないことなら、それは神聖な使命と言えるんじゃないか?
ええ?
……それに、ばかなことでもしていないと、人生は長すぎるのさ」




