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王花  作者: 小野島ごろう
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一人旅7

 さすがにこれは、難関過ぎる。


 ここで引き返したところで、だれも(とが)めはしないだろう。


 この臭いをかぎ、カメムシを食べる光景を見てみればいいんだ!

 だれだって、緑の色素が抜けるくらい、のたうち回るだろう!


 


「ごめん、ちょっと、用事を思い出して……。

また出直すよ」

 ヒカリは、若者ににこりと笑いかけて、きびすを返した。




 一刻も早く、水で体を洗いたい。

 身体中に、このひどい激臭がしみついているに違いない。



 帰る方向に足を踏み出したとたん、黒いマントがすべるように近づいてくるのが見えた。


 考える暇もない。

 ヒカリは回れ右をして、クサギ族の若者に大声で呼びかけた。


「あいつ!

あいつ、死神だから!

悪い奴! ぜったい通しちゃだめだ!」



 そのまま、奥に向かって走りこんで行く。








「お若い人。あんたは、どこに行くつもりなのかえ?」


 長は、とても大きな人だった。

 臭いも体に比例していたが、ヒカリの鼻はもう、なんにも感じなくなっていた。

 ただ、次々に涙を送り出している目が、しょぼついて仕方がない。



「アザミ族のコロニーは、たしかにこの向こうに広がっているが。

そのまた向こうに行くつもりがあるのかえ?」



「そうしなきゃならないみたいだから」

 長の足元に座り込んだヒカリは、そこら中に生えている、いい匂いの花を摘み取って、鼻に当てた。

 少し、息ができる。


「こんな花より、ミントを植えた方がいいよ。

カ……」

 カメムシ、と言いかけて、

「虫よけには、ミントが効くんだ。おれのコロニーでも、ミントを植えていたよ」



「お若いの。

人生で、一番恐ろしいのは、なにかわかるかね?」


「枯れること?」


「まあ、枯れるのも恐ろしいが、もっと恐ろしいことがあるのさ。

長く生きてみないと、なかなかわからないだろうが」



 ああ。

 始まった。


 ヒカリは、急につまらなくなった。


 年取ったことを鼻にかけるしか能がない年寄りの、いかに多いことか。

 この人も、そうなのだろうか。




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