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王花  作者: 小野島ごろう
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一人旅5

 荒野の果てに、丘が現れた。

 ここまで来るのに、いったい何日かかっただろう。


 影が伸びて、日が暮れるのが早くなり、暑さがほんの少しやわらいできた気がする。

 わずかずつではあっても、秋が訪れてきているのかもしれない。

 


 もう、ヒカリは日を数えるのをやめていた。




 低い丘なのに、登るのは、なかなかしんどかった。

 ヒカリは何度も座り込んで、荒い息を整えた。


 久しぶりに自分の手足をつくづくと眺める。

 痩せたかもしれない。



 あれから、ずっと死神の影におびえてきた。

 目の端に黒いマントが映ったような気がすると、つい走り出した。

 わずかな物音にもびくびくする。

 熟睡もできない。


 実際は、あれから一度もはっきりとは見ていなかった。

 ヒカリの後をついてきてはいないのかもしれないが、油断はできない。

 



 やっとたどり着いた丘のてっぺん。

 日ざしを浴びながら見下ろすと、麓にコロニーがある。



 やっと人里にたどり着いた!


 ヒカリは、疲れも吹き飛んだ。

 嬉しくて、麓に向かって駆け下りていく。




 近づくにつれて、なんともいえない(にお)いがし始めた。


 大量のカメムシが一斉に怒ったような。




 だが、久しぶりのコロニーだ。

 とにかく、人間に会いたかった。

 話し声を聞きたかった。




 ヒカリは、手で鼻を覆いながら、コロニーに入って行った。






「何者だ?」

 コロニーのいちばん端に生えていた、きれいな若者が、鋭い声でとがめた。


「こんにちは。

わたしは、カタバミ族のヒカリ」



 ヒカリは、鼻から手を放して答えた。

 その途端、ひどい刺激臭が襲ってきて、涙がぼろぼろ流れ始めた。




「カタバミ族? 聞いたことない。

怪しいやつ! おまけに、なんだ、その足は!」


 

「これは、ちょっとした訳アリで。

突然変異、ってやつ?

人探しを頼まれて来たんだけど。

ほら、こうやって歩けないと、探せないでしょ?」



 涙声で、なんとか答えた。

 こんな珍妙な場面なのに、だれかと話ができることに、ヒカリの心は(おど)った。



「ここは、何族?」



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