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王花  作者: 小野島ごろう
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一人旅2

 だれかに、泣きつきたい。

 師匠に送り出されてからの苦労の数々を、全部吐き出して、慰めてもらいたい。



 ヘビに遭って、大回りしなければならなくなったこと。

 髪の毛が絡んだ枝を引っ張ったら、ハチが飛び出してきて、あわてて川に飛び込んだこと。

 疲れた足が腫れて重くて、おまけに足の指が痛いこと。

 手だって、ささったトゲがまだ残って、ずっとちくちく痛いこと。



 なにより、とにかく、ずうっと独りっきりで、さみしくってしようがないことも。




 コマばあさんに言ったら。

 「そのくらいのことで!」って馬鹿にされるだろうなあ。

 チョウばあさんなら、相づちを打ちながら、聞き流すだろう。



 その二人から逃げてきたというのに、ヒカリはもう、あの小憎らしいしわだらけの顔が見たくてたまらないのだった。





「帰ろうかなあ」


 ヒカリの目に、涙がまた盛り上がってきた。



 ああしかし、帰れない。

 帰ったら、ヒカリは死神に引き渡されてしまうのだ。


 こんなに懐かしくてしょうがない、親とも思っている身内の手で!



 でも、カタバミ族のコロニーには帰れないとしても。

 どこかそこら辺の、事情を知らないコロニーが、ヒカリを受け入れてくれるのではないだろうか?



 そうだ、やめてしまえばいい。

 理由なんて、いくらでも作れる。


 大けがをしようか。

 病気で動けなくなろうか。

 毒に当たったことにしようか。



 だいたい、はるか遠くの、存在も確かではない少女を、なぜ危険を冒してまで探し出さねばならないのか?


 会えばわかる、と師匠は言ったが。

 逆を言えば、会うまではわからないということだ。


 はっきりした理由もわからない、あやふやな目的。



 それに、探し出すのに何十日かかるのだろう? 何百日かな?

 いや、何年かも? ひょっとして、何十年だったら?


 あるいは、もしかしたら、生きているうちに探し出せないかもしれない。



 探し出せたとしても、会えるのだろうか?

 警備が厳重だったら、途中で捕まったり、殺されることだってあるかもしれない。

 こっちが無事でも、あっちが死んでたら?


 


 なにもかもが、ヒカリの癇に障る(かんにさわる)




 どうせ、いつかはみんな死んでしまうのだ。


 神さまが決めたことなら、それに逆らうのは無駄なあがきではないか?


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