鬼っ子9
ヒカリの背筋に、寒気が走った。
「でも……バッタ、だろ?」
師匠は、悲し気に首を振った。
「金色の髪の生えた、紫の目のバッタだそうだ」
ヒカリは、頭を殴られたような気がして、ちょっとよろめいた。
「で、でも……ばあさんたちが、そんなこと許すはずがないよ」
ばあさんたちは、口うるさくて怒りっぽいが、情に厚く、正義感の強い人たちだ。
ヒカリは、今までの、にぎやかなケンカの数々を思い返す。
あの人たちが、出来が悪くとも、血のつながった孫を、いけにえに差し出すはずがない。
師匠は、憐れみのこもったまなざしを寄越した。
「一族、いや、種族全部の命と、お前ひとりの命と、てんびんにかけざるを得なかったのかもしれない。
お前の身体のしくみが、種族を存続させるならば、涙をのんで。
とうとい人柱ってやつさ」
「いやだ!」
ヒカリは、叫んだ。
「ひどすぎる!」
みんながどうなろうと、知った事か。
「おれを切り刻んで、生き残ろうとするなんて、人でなしども!」
「落ち着きなさい、ヒカリ」
師匠が、ヒカリの肩に手をかけた。
その、ひんやりと湿って、ひたりと吸い付く感じに、ヒカリはぞっとした。
ぞっとはしたが、師匠を尊敬しているので、動かず、表情を変えないように気をつけた。
師匠は、その上、ヒカリの頬に息がかかるほど、顔を寄せてきた。
濡れて朽ちた落ち葉の匂いがする。
ヒカリは、目をぎゅっとつむって、我慢した。
「これから言う事を、よく覚えておきなさい。
お前を救い、しかもみんなも救える方法が、一つあるのだよ」




