星の髪留め
「なんてきれいなんだ」
見上げた夜空には、赤、紫、青、金の順に一直線に並んだ明るい星。
「ええ」
ランは、うっとりと同意した。
こんなロマンティックな夜に、逢ってはダメだなんて。
大人たちは、どうかしている。
きっと、意味もない掟で、ただ若者を縛りたいだけなんだ。
「ちがう、きみのことだよ」
ランは、熱くささやかれた耳元を思わず手で覆った。
「燃えている赤い瞳は火の星のよう。波打つ青い髪は、どこか遠くにあるという、伝説の海のよう」
トキこそ、なんてきれいな人なんだろう。
あの星々が滴り落ちてできたような、金の髪。紅い唇。紫の瞳。
トキが、ぐいとランの肩を引き寄せた。
ランは、トキの胸に倒れ込む。
「あの星を髪留めにして、この髪に飾りたい……」
紫の瞳が、ランのすぐ目の前にある。くらくらする。
「きみの鼓動が、こんなにも近い……高鳴ってるの? かわいいひと……」
「トキ……あなたが好きだから……」
「わたしもだよ……きみを一目見た時から、きみのとりこさ……」
「ねえ、いい?」
トキの声が、激情にかすれている。
「ええ」
ランは、ためらわなかった。
今この時を逃せば、もう会えないかもしれない。
この恋だけは、貫きたい。
ほほ笑むトキの腹部が、ぐにゃりと柔らかくなった。
そこにいくつもの突起と窪みが現れる。
ランは、理性が吹き飛ぶのを覚えた。
全身がかっと熱くなる。
ランの腹部にも、あまたの突起と窪みが現れた。
トキがランに手足を巻き付け、腹部同士を強く密着させた。
二人の全ての凹凸はぴたりとはまり合い、ゆるゆると溶け合った。
ああ……
トキ。
いとしい。
あなたはわたし。わたしはあなた。
天も地も。星も夜も。古めかしい掟も。親の小言も。
なにもかも溶けてしまえ。




