サーザンランドの黒豹王子
ヴァルファデとエルシーナの子は、色はヴァルファデそっくりのグレーの毛並み。性格はエルシーナに似て凛とした男の子だ。レスターやクロム君と遊ぶケイやツキとはタイプが違う。
優しいお母さんタイプのルルは子供達をそばで見ていたい派で、女騎士様タイプのエルシーナは早く自立させたい派。
子供への関わり方でそれはよく分かる。
今日は黒豹の国の面会らしいので、私も勝手に見学に行くことにした。
ミリーナさんに全身磨き上げられて、白から薄紫色のグラデーションになっている天女風の着物を着る。銀の刺繍が入った帯をしめ、レースでできた打掛を羽織る。
天女風すぎるのも飽きたので髪はハーフアップにして、ゆるく巻いてもらった。
藤の花の簪をつけ、髪に本物の藤の花をあしらっていく。
薄紫色のショールを羽織って完成。
レスターはツキと勝負中だったので、クロム君を抱いて厩に向かう。
「エルシーナ!多分今日あなたの息子の主人が決まるの。ヴァルファデと一緒に見に行こう!」
エルシーナはじっと私を見てる。私も見つめ返していると、厩から出てきてくれた。
この子も子供を産んでから、私たちとも仲良くしてくれている。
陛下の用意したオシャレ手綱をかけ、ヴァルファデにも準備する。
クロム君がヴァルファデの背中に乗って、私はエルシーナの手綱をひいて少し後ろを歩いて行く。
仔馬がいたところは王宮の裏手の庭園で、紺色の騎士服を着た豹獣人達が奥に沢山見えて、大きな歓声が上がった所だった。
「ほら、あの人だよ。豹の国の王子様だって」
私達が庭園の入り口で立ち止まると、向こうから仔馬がかけてきた。
ヴァルファデとエルシーナの数メートル前でピタリと止まる。
そのまま深く頭を垂れて、エルシーナが低く鳴くと礼を解いて私達の元にまたかけてきた。
「うんうん、えらいねぇ、なんてお名前を貰ったの?」
答える訳もない仔馬に話しかけて頭を撫でると、誠実そうな、優しい声がかかった。
「シーラフと、名付けました。我が国の古い言葉で夜明けという意味でございます。あなたは……王弟妃殿下ですね」
黒髪の短髪。琥珀色の瞳の青年が片手を胸につけ、騎士の礼をとっている。
「はい、紬と申します」
「サーザンランド国第一王子、ルーファス・アルス・サーザンランドと申します、大切な天馬をお譲り頂き、感謝申し上げます。妃殿下のご要望、忘れてはおりません。必ず大切にするとお約束いたしましょう」
「たまに会いにいっても……よいでしょうか。ここにいる子たちはシーラフの両親なのです……顔を見せてあげたく存じます」
「歓迎致します。私も妃殿下の元を訪れましょう」
琥珀色の瞳が私を見る。精悍なお顔がニカっと笑ってとても人懐っこい顔に変わった。
この人なら大丈夫。シーラフは大切にされる。
「魔王の怒りに触れてしまったようです。それでは御前、失礼致します」
シーラフも彼の後ろをトコトコついて行く。
「シーラフ!行ってらっしゃい。頑張ってね!」
私が声をかけると、ルーファス王子も振り向き嬉しそうにまた一礼して去っていった。
————「おいテメェ、堂々と俺の前で他の男と話してんじゃねぇよ!この世界ごとぶち壊すぞ」
リヒト様がバサっと私の前に降り立ち文句を言う。また意味わからんこといってるな。
「リヒト様、抱っこして?」
「なんっ!? ~~~っ!? 聞いてんのか!? 」
「抱っこ、して?」
「するけど……」
(よし!!)
リヒト様にだきあげてもらって、シーラフのお見送りをした。ヴァルファデとエルシーナも見えなくなるまでシーラフの後ろ姿を見ていた。
「んで?あの男と何話した?」
あ、魔王戻ってきちゃった。これはいかん。
「リヒト様の浮気相手の猫さんは綺麗だったね?」
「はぁ!?お前より綺麗な女なんていねぇよ!!!」
「ちょっと、悲しかったな?」
「まかせろ、慰めてやる。俺得意だぞ?」
(うん、よしよし)
————「親父はほんっとポンコツだな!!!兄上!ケイを連れてきました!」
私達の上空にツキに跨ったレスターが現れて、ケイがこっちにすごいスピードで降りてくる。ヴァルファデの背中にいたクロム君が高くジャンプして空中でケイの背に跨り、レスターから投げられた木刀をキャッチする。
そのまま上空で空のチャンバラごっこが始まってしまい、陛下と陛下の侍従達、警備の軍人さん達が目をむいて口をあんぐり開けて固まっている。
「くっそ~~~!!上空で騎乗すんの上手いな!?」
ルースくんが悔しそうに言う。
「短い木刀だから許したのに!!いつのまにか大人サイズ使ってる!!レスター!!」
私の声にピタリと上空で止まった4匹。
「ツキとケイも紬ちゃんに怒られてるの分かってるなぁ、まぁでもあそこまで上達してれば大人サイズの方が逆に安全かもな。魔力を乗せやすいし」
「クロードさんが、そう言うなら……」
4匹がほっとした顔をして、また見えない速さで戦い出した。ツキとケイは二人を背に乗せて戦ったり、一個人として戦ったりと自由に参戦してる。
上空で雷や突風がおこっていて、見ている方が疲れるので、ため息をついてもう見るのはやめにした。
「り、リヒト?お前、軍神でも育てるつもり!?僕らの子供の頃よりあれ何倍も強くない!?」
陛下がまたオロオロとリヒト様に話しかける。
「ええ、そうですね。気づいたらああなっておりまして。既に他国の騎士団程度なら一人で潰してくるでしょう」
「あれは私達でも真剣にやらないとだめでしょうねぇ。天馬との連携と相性が良すぎます」
ユアンさんが横から言う。
「つ、紬ちゃんはこの世界を滅ぼすつもりかな!?」
「え? 私? 私は人間ですよ?」
なぜみんなそんな目で見てくるのか。
「リヒト、おまえ、つむぎちゃんを怒らせないようにしないと……紬ちゃんの一声で世界が終わるぞ」
「肝に銘じます」




