幹部会議
いつもの執務室でいつもの顔ぶれが皆難しい顔をしている。
紬が連れて来たヴァルファデの伴侶はあれからすぐに妊娠した。続け様の天馬獲得と繁殖の成功に、各国からの問い合わせが絶えない。
「殿下~、報告~~、エルシーナがきてからヴァルファデの魔力が上がった様な気がするんだけど~~」
「ああ。テルガードもルルが来てから魔力が上がってる。五割増しってとこか。ケイとツキが産まれてからは二倍になってる」
全員が驚愕の眼差しで俺を見る。
天馬一頭をうまく操れば戦場では兵士百人分の働きをする。乗り手が強ければより強い力を発揮する。雷も風も操るし、スピードも段違いに出る。一頭いれば街を滅ぼすのは簡単だと言われるような生き物だ。
だから各国がこぞって欲しがる。
ステータスでもあるし、何より牽制にもなる。
「家族を守るため……でしょうか……」
ユアンが驚愕の顔のまま聞く。
「だろうな。つむぎは気付いてない様だ。子供を産んでもルルは変わらなかったから雄だけに見られる能力なのかもな」
「ひゅ~~~~~~う!!じゃあこのまま順調にエルシーナが子供をうんだらヴァルファデもっと強くなんの!?ヤバすぎない!?男のロマン!!つむつむすっげぇ!!惚れる!」
「ルースおまえ、訓練しないとヴァルファデを御しきれなくなるぞ。俺もテルガードの力にのまれるかと思った」
「ヒッッ!」
「リヒト、この事は公表しないほうが良いんじゃないか?つむぎちゃんがキーパーソンなのはだんだん気付かれ始めてる」
クロードが心配気に言う。
「ああ。どうせつむぎがいなきゃこんな事できんからな。公表はなしだ」
エルシーナの妊娠は、喜びまくった兄上が国際会議の席で漏らしてしまった。いつかはバレる事ではあるが、まだ胎児の段階ですでに購入の問い合わせが多発している。
「三ヶ月後のレスター殿下のお披露目にはもう産まれているでしょう。各国がつむぎ嬢に群がりますよ」
「やっかいなのも来るんでしょ~~~?また前みたいにつむつむが傷ついて逃げ出しちゃうのは絶対避けたい~~~~~~」
俺に懸想をしていると言い張る猫獣人の姫が何年も輿入れの要請をして来ている。
毎回断っていたが、既につむぎと婚姻を結んだ今でも側室として入内したいとしつこい。
「国際パーティーで少し話した程度の女が、俺の何が気にいったんだかな」
「顔っす。あと金」
リツが死んだ魚のような目で答える。
「レスター殿下のお披露目は国際パーティーですから各国の王侯貴族も招待されます。猫の姫も例外ではありません。つむぎ嬢に以前と同じ轍をふませたくありません」
以前開かれた夜会では、俺の過去の女達からの接触を受けてつむぎがエルダゾルクを去ってしまった過去がある。
もうあんな思いは懲り懲りだ。エルダゾルクの至宝は必ず守らなければならない。
「前もってしっかり紬嬢にご説明願います。我らの姫は、猫の姫と戦ってまでここに残ってはくれません」
「だよなぁ…………あいつ、俺に女の影があれば即逃げそうだ……言ってて自分で虚しくなってくる……」
「つむつむはさ~怒るっていうより、諦めちゃうんだよね~~。アイラちゃんのアドバイスで少しは良くなって来たけど~」
「怒ってくれればどれだけ嬉しいか……でもあいつはまた逃げるだろうな……泣きながら」
つむぎは他の女と言い合って、俺に怒る様な性格ではない。いきなり全てを諦めて、身を引いてしまう。綺麗さっぱり全てを捨てて逃げてしまう。
「レスター殿下まで連れて逃げられたら王家存続の意味でもヤバいっす。クロムもレスター殿下も死んでもついて行くでしょうし……レスター殿下は王家の血筋ですから、契約破棄の書類を神界から取り寄せるなんて簡単ですよ!?」
リツが最悪な想像を口にする。
「俺はもうあんな思いは懲り懲りだ。お前らも絶対に紬を守れ。何があっても逃すな」
「逃げるの前提なの虚しい~~~~~~」




