あいしてる
「やっと俺のものになった!超長かった!!」
「ええ……長くないよスピード婚だよ!!出会ってからまだ半年も経ってないのに!」
この議論は獣人と人間の間では一生終わらない気がする。
エルダゾルク神から頂いた金のシンプルな指輪は婚約指輪と重ね付けしていて、キラキラと月明かりに反射して光を放ち見惚れてしまう。
「俺の番、俺だけのものだ。誰にも見られない様に閉じ込めたい」
「ひいっ!冗談に聞こえない!!」
「もう絶対に逃がさない」
「逃げ出す様な事しなきゃいいのに!」
夫婦の部屋の大きなベッドでリヒト様の腕の中に閉じ込められる。
天蓋から垂れた布が夜風で柔らかく揺れている。
「そんな格好して俺の所に来たなら覚悟はできてんだろうなぁ?」
「えぇ……初夜だからって、ミリーナさんが……」
ミリーナさんがニッコニコで私に着せつけたのは珍しく着物じゃなくてネグリジェだった。
ヒラヒラのフリルと繊細なレースのついた可愛いデザインだけれど、テロンとしたサテンの布地が気持ちいい。めっちゃミニでスースーする。
「もう散々リヒト様に食べられてるから初夜も何もないのに……」
「お前が自分からこれを着て俺の所に来る日はくるのか………………ミリーナはお前の専属から動かさん!!俺の乳母いい仕事する!!!」
「………………………………これ寒いから早く抱きしめて」
「任せろ!!」
ジト目で甘えると嬉しそうに笑う。
「ねぇリヒト様、女神アフネスってどんな女神?」
「んあ?繁栄の女神だな。何でだ?」
「その女神様が私をこの世界へ召喚するのに手を貸したんだって。婚礼の儀の時に、空に魔法陣が浮かんだの。ラディアンの王様がアフネス様の魔法陣だって言ってたの、思い出して……」
「へぇ、俺には見えなかったな。聖女はいつも癒しの女神ラクレシアが関わってんのかとおもったが。そんな事もあるんだな」
「だから私、癒しの力あんまり上手に使えないのかもね。繁栄かぁ、お店とか仕事とかしたらいいのかな?」
「やりてぇの?」
リヒト様は頓着してなさそう。
婚約者の時も王弟妃になっても特に何かを強制されてはいない。
お話の中で異世界に行く主人公はいつもダンスとかマナーとか勉強しているイメージなのに。
「うーん、今が幸せだからあんまりそういうのは……」
「お前は自由に生きればいい。俺のそばで」
「ラディアンでは聖女のお勤めがあるって言われたよ?傷付いた騎士様達を治して欲しいって。力が使えなくて出来なかったけど……リヒト様はそういう事、全然言わないね」
「はぁ?俺がお前を兵士に会わせるわけねぇだろ!他の男に触らせるなんてありえねぇんだよ!!お前に匂いがつく事も、他の男にお前の匂いをくれてやる事も両方ありえん!!!」
ブレないな。
大切にしてもらっていると思う。
口の悪い、不良みたいな私の王子様。
「あいしてる、りひとさま……」
「っあ!?!!?!?!?んなっ!?は!?」
首に手を回してキスを贈る。
愛してるって初めて言ったかも。
リヒト様めっちゃびっくりしてるな。
日本人、愛してるって言うのハードル高いんだよねぇ。大好きならいいやすいのに。
「つむぎ、もう一回言え」
「りひとさま」
「それじゃねぇよ!!!!」
「お兄さん」
「はあ!?」
「ふふ、りひとさま、わたし、リヒト様の事、愛してるの」
「~~~~~~っつ」




