離れの女子会
私の離れに女子が沢山いる。こんな事は未だかつてなくて、緊張してしまう。
リヒト様が今朝籠にフルーツをどっさりと、プレゼントもどっさり置いていった。フルーツの方は今日の女子会の為の差し入れだと分かったので、朝からフルーツタルトを焼いてフルーツティーまで仕込んだ。
「おおおいしぃぃぃ、何これぇぇえ!!」
クレアちゃんは竜人なのにやっぱりリスっぽくて、栗色のふわふわの髪が可愛らしい。
軽食として出したサンドイッチやポテトもとても褒めてもらえたけれど、最後のデザートのフルーツタルトはみんなにヒットしたらしく大好評だった。
「本当においしいわね。もっと早くお呼ばれしておけばよかったわ!損したじゃない!にしてもモモンガ!こぼし過ぎよ!」
ルルリエさんはクロム君を叱りつつも何かと世話をやいてる。バリバリのキャリアウーマンって感じなのに世話焼きだ。
「ほんと美味しい……妃殿下、天才です……」
クレアちゃんが連れて来たお友達で子爵令嬢のレアットちゃんは、竜人だけど小柄で丸メガネをかけた水色の髪のおさげの女の子。
同い年三人で仲良くなりたいからって嬉しい理由でクレアちゃんが連れて来てくれた。今日だけで、だいぶ仲良くなれたと思う。
「あんた達!せっかく女子会してんだから恋バナぐらいしな!食べてばっかりじゃないの!!ジャリ坊!あんたはこっちもお食べ!」
アイラさんに給餌されてクロム君が私の膝の上で口をあける。今日は小さな小さな軍服を着せて、私によって前髪を切られたクロム君は可愛さが大爆発していてみんなに大人気だ。
あっちこっちからフォークやスプーンがクロム君の口の前に出されている。
テトがのんびりと庭で草を食べていて、今日はルース君の馬のヴァルファデもテトと一緒に私の庭に遊びに来てくれていた。艶々のグレーの毛並みがテトの黒と並んでとても綺麗だ。
「しっかしほんとに大物兄ちゃんはあんたに首ったけだねぇ。庭を丸ごと改装して、あの天馬達と一緒にいられる様にしたんだろ?縁側のプレゼントだって、溺れるほどあるじゃないか」
開けきれずに縁側に置いたままになっているプレゼントの山とお庭を見てアイラさんが言う。
「あれはもう病気ね。紬ちゃんを他の男に触らせたくないからって医者まで女医の私を指名するぐらいなんだから!」
「え?獣人はみんなそうじゃないんですか?」
リヒト様しか知らないから良く分からない。
獣人だからなんだと思っていた。
「んな訳あるかい!そりゃあプレゼントは愛情表現だけどもあんな量聞いた事ないよ!匂いが付くのだってそりゃあ嫌がるが、医者は別だよ!そのぐらいの分別はある」
お、おぅ、やっぱりそうなんだ。
「素敵……」
おっとりさんなのか、レアットちゃんは一人でうっとりしてる。みんなの個性が強すぎてカオスな現場になっている。
————「よう婆さん、息災か?」
離れの部屋にひょいと入って来た私の婚約者様は今日も黒い軍服が似合ってかっこいい。
「お義母様とお呼び!」
「リヒト様!」
リヒト様を認めて、アイラさん以外がみんな膝をついて頭を垂れる。えぇ……
「いい。礼はいらない。妃をよろしく頼む。紬、帰りはユアン達を寄越す」
「うん、ありがとう」
お友達の帰りの心配をしてくれたのか。街まで結構あるもんね。
それだけ言って、持ち上げた髪先にキスを落としてまた去っていった。
「ふわぁああああ、別人~~~~~~!」
「うん、入れ替わったの?殿下」
クレアちゃんが叫び、レアットちゃんが首を傾げてる。
「別人?リヒト様、出会った時からずっとあんなだよ。なんならもっとひどいよ」
「別人よ!紬ちゃんんん!私は爵位が低いから全部のパーティーに出てる訳じゃないけど、殿下はどんな女の子にも冷たい態度で有名だものぉ!!!」
「えぇ?でも彼女はいっぱいいたよ?」
「名前も覚えてもらえない彼女よ!?自分から売り込みに行って、なんとかお相手をして頂いても雑談すらして頂けないのよ!?それでも最高にかっこいいから大人気だったけど!!」
へ~そんなだったのか。今夜いじめてやろう。ちょっと嬉しいな。
「私の娘に同じことをしたらまたカルネクアに連れて帰るから安心おし!」
「ふふふ、今の所大丈夫そう。帰りはみんなを送ってくれるって」
アイラさんはもう完全に私を娘と思ってくれていて、リヒト様にも容赦ない。でもリヒト様が褒賞として渡そうとしたあの物件の権利は断って、賃貸契約だけを結んだ事を私は知ってる。褒賞にならないから格安にしたとリヒト様がぼやいていたから。人としての芯がある人だと思う。
「あたしゃキラキラ坊やがいいねぇ。ありゃあいい男だ」
「ふぁぁあずるいぃい!ユアン様はみんなのユアン様なのにぃ!最後の超優良物件の独り占めは命をねらわれますよぉおお!」
「うん、殿下とユアン様、お並びしてるところ見たかった……ってゆうか、私達なんかの送迎に幹部を使うって……」
ユアンさん人気だな。美人顔がかっこいいっていう奇跡の人だし、さもありなん。
—————「恐縮です。ではアイラ様は私の馬に」
突然庭からユアンさんの声がして、クレアちゃんとレアットちゃんの目が一瞬でハートマークになった。
庭にはルース君とクロードさんもいて、それぞれが自分の天馬を引いて縁側まで迎えに来てくれていた。
「お~姫がいっぱい~つむつむ~、俺はどの姫を送る~?」
「ルース君!あ、じゃあクレアちゃんをお願い!ありがとう!クロードさんもわざわざありがとうございます!」
「役得だよ。責任持って送るから安心してくれ」
ユアンさんはアイラさんをお姫様抱っこしたあと翼を出してふんわり騎乗して、なんかもう物語の挿絵を見ている気分だった。アイラさんも超満足そうに、皇室か!って感じで手を振って帰っていった。
ルース君とクロードさんはまず初めにクレアちゃんとレアットちゃんをお姫様抱っこで抱き上げて騎乗させてからひらりと自分も騎乗して、四人でお庭を出て行った。馬への乗せ方も色々あるんだな。
「さぁ今日は疲れただろうから良く寝るのよ?殿下に流されちゃダメよ!」
「ふふ、はい。また誘ってもいいですか?ルルリエさん」
「大歓迎よ。次は私の恋バナをしてあげるから楽しみにしてなさい!モモンガ、歯はちゃんと磨くのよ!」
私に抱っこされてうつらうつらとしていたクロム君が寝ぼけながらもコクンと頷く。
ルルリエさんが母屋に帰るのを見送って、寝落ちしそうなクロム君の歯を磨いてあげる。
小さな着物に着替えさせると途中からもうすぅすぅと寝息が聞こえてきてすごく可愛い。
「今日は一緒にいてくれてありがとうね」
小さなおでこにキスをして奥の部屋に寝かしつけると、子どもの高い体温が心地よくて私もうとうとと眠りにおちた。
夕方の優しい風が離れを撫でていく。




