陛下の治癒2
リヒト様の言ってる意味が良くわからない。
陛下に事情をどう話そう。変な女と思われるよね。ちょっとの間私を好きだと思って下さいなんて言えるかな……
私をひょいと抱いたリヒト様がドアを開けて廊下に出る。
そのまますぐ近くの大きな扉のドアをノックすると、中からクロードさんが扉を開けてくれた。
私を見てびっくりしていたけれど、病人の部屋なので声は我慢したみたいだ。
リヒト様が何か合図をすると、医師団と思わしき人達が一斉に礼をして退出していった。
リツさんが扉を閉めて、私を抱いたリヒト様はそのまま天蓋の布が垂れた陛下のベットに近づいていく。
陛下を認めて息を呑んだ。前に見た時よりももっと悪化していると一目で分かる。
金の髪はくすんで、身体中の肉という肉がこそげ落ちている。
いろんな管につながれていて、ゼェゼェとした呼吸も弱い。
————完全に意識がない。
リヒト様にギュッと抱きついて、耳元で小さな声で言う。
「ごめ、ごめんなさい。遅かった、遅かったね。意識がないんじゃ、事情もはなせな」
話している最中にキスされて、最後まで話させてもらえない。
「つむぎ、俺五日寝てないんだよ」
「え?」
「お前が寝たの確認してからまたここにいた」
「そ、そうだったの!?」
「ん、だからすげえ頭痛い。今治して」
「い、今!?」
「ほら、目閉じろ」
リヒト様はそう言って、陛下のベットの縁に座った。
「つむぎ、愛してるよ。俺の番。俺の全て」
「う、うん」
優しいキスが贈られて、目を閉じる。
右手の熱をリヒト様に送る。魔力の濁流をそのままリヒト様に。ちょっと遅いかなと感じたけれど、またリヒト様から私に力が循環して来た感覚があった。
リヒト様の顔が離れていって目を開けると、ちょうど白金の光がキラキラと消えていく所だった。
リヒト様は治せた、良かった。
「ごめ、ごめんね、私いつもダメで」
「ダメじゃないよ」
————「天女殿…………?」
「兄上、そろそろ私の婚約者から手を離して頂きたい」
「!?」
見ると金の乱れた髪を片手で後ろにかき上げながら私の手を取る壮絶なイケオジがいる。乱れた金髪と、少しブラウンが入った無精髭。
まだ痩せてはいるけれど顔色が良く、何より上体を起こして普通に喋った?
「兄上、怒りますよ」
リヒト様が私を抱きながら静かに切れている。
「リヒトか」
うん。声までイケボだね。リヒト様もイケボだけど陛下は少しハスキーな感じ。
「何で……」
「俺が兄上を右手で掴んでた。兄上の手をお前の手の上に置いて。紬は二人いっぺんに治療したんだよ」
「天女殿、あなたが私を?これは運命か」
「はぁつむぎ、お前は可愛いけど誰も彼も虜にしやがって」
リヒト様は私の手を掴む陛下の腕をはたき落とした。
「ええぇ!病人!病人だよ!!」
「もう元気だよ。魔力の状態でわかる。何なら生まれてから今までで一番絶好調だよ兄上は。腹減ってるだけだ」
「天女殿はつむぎというのか。可憐だな」
「ひぇっ……」
薄い紫の瞳がじっとこちらを見る。瞳の中の金色はリヒト様と同じ。
「はぁ~兄上。紬は俺の番だ」
「兄弟なんだ、仲良くわけ合おう」
「んな訳あるか!!!早く飯食え!」
お、おう…… 敬語はずれたな。
「リツ!厨房に言ってじゃんじゃん持ってこさせろ!!十人前は食うぞこれ」
「はっ!」
リツさんが慌てて出ていって、またお部屋が静かになる。
「リヒト……様、ごめんなさい……私、すごく、眠い、かも」
「連続で治療したんだ。疲れたんだよ。離れに戻るか?」
「ううん、リヒト様の、お部屋が、いい……」
「~~~~~~っおっ前、眠いくせに煽ってんじゃねぇよ。兄上、御前失礼する。また後日伺います故。今は番を休ませたい」
「許す。天女殿によろしく言ってくれ。その時は二人で来い」
「はぁ~~~~~~わかりましたよ」




