帰還
リツさんと数人の軍服を着た軍人さんがどんどん家具を運び出していく。
私の荷物はすごく少ないので自分でやろうとしたけれど、私を抱いたままお兄さんが片手で木箱に詰めていく。
「お、おろして。自分でやるから」
「嫌だ。もう逃さない。せっかく邸に帰る気になってるんだ、離してやらない。絶対に連れて帰る。連れて帰るまで離さない」
「ええ……」
なんかもうどうでもいいか。どうせ箱一つ分くらいしか荷物はないし。好きにさせておこう。
了承の意味を込めて首筋に擦り寄ると一瞬ビクッとしたお兄さんが言った。
「え……ここでもう襲っていいの……?マジ……?」
「いいわけないでしょエロ竜」
ガヤガヤといつになく騒がしいお引っ越し作業が続いていく。
「アイラちゃ~ん、この荷物、こんな感じでいい~??」
「おや、あんたはイケメンじゃないが見所があるね」
アイラさんの壮絶な量の化粧品達を丁寧に詰めたらしいルース君は、もうアイラさんと仲良くなってる……
「あ、わかる~?俺未亡人に人気なんだよね~アイラちゃんの護衛担当だからよろしくね~」
「いらない知識がまた一つ増えた……」
「つむつむひでぇ!久しぶりのルース君に優しくして!!」
「キラキラ坊やの様に紳士にエスコートできたら、担当護衛にしてやる」
お、おぅ。これがレベルMAXの〝自分はどうしたいのかカード“ か……すごい。キラキラ坊やってユアンさんのことだよね……
「任せて姫~!俺結構強いから、必ず守るよ~!」
ルース君全然動じてない。こっちも凄い。
「アイラ殿、馬車を選んでくれ。要望通り色々取り揃えて来た」
体を折りたたんで入って来たクロードさんがアイラさんに聞く。
「おい堅物。お前はちょっと指導が必要そうだねぇ」
「ひぃ!!!!す、すまん、女性に慣れていないんだ、俺は」
「慣れもへったくれもあるかい!!男だろ!!しっかりおし!!」
大きな体のクロードさんが小さくなってアイラさんを外にエスコートして行った。
「馬車をいっぱい持って来たの?」
「あのばあさんの要望でな。手持ちの種類全部持って来た。どうせ荷物もあるし、こんなの褒賞にもならんから別にいいけど。見てろ、母上の馬車を選ぶぞあの婆さん」
そう言って私を抱いたまま庭に出てくれた。
外には私が前に乗ったふかふかクッションのシンプル豪華な馬車と、軍事用の馬車、普通の簡素な馬車、それにやけにメルヘンなピンクと白金の装飾が沢山ついたラブリーな馬車が停められていた。
ラブリー馬車の前で、クロードさんのエスコートについてビシバシ指導しながら扉をくぐるアイラさんが見えた。
「な?あたったろ」
「ふふふ、本当だ」
「はぁ~~~~~やっと俺の前で笑った。超長かった。俺もう死ぬかと思った」
何が?私笑ってなかったかな。
「大げさだよ」
「お前はどれだけ俺がお前を好きか分かってねぇんだよ」
「七股男が何言ってんの」
「まだ言うのそれ……」
◇◆◇
カタカタと馬車が揺れる心地よいリズムで、リヒト様のお膝の上で眠りそうになる。
リヒト様は本当に私を片時も離さずに、馬車でもずっと側にいる。
「テトは連れてこなかったの?ルース君達の馬はいるのに」
「あーー、テルガードとクロムを連れて来たら、会えた事に満足してお前が余計帰ってこないと思って……」
「そんな事で!?」
「俺にとっては死活問題だったんだよ!!お前もう黙れ」
口を塞ぐ様にキスされて、すぐに甘い甘いキスに変わる。
「み、みんなに匂いでバレちゃうよ!?」
「だから何だ?俺はもう我慢しない。一生分した。帰ったらすぐ婚約するからな!!!」
「ええ……婚約って怒られてするものなの……」
「はぁ、いい匂い、可愛い、やばい。理性サヨナラ」
「ちょっと!しっかりして!」
「お、そろそろか……」
リヒト様が外の景色を見て言う。
「な、何が?」
「エルダゾルクとの国境。もう越えるぞ。紬、左肩はどうだ」
「?何も……?あ、やっぱり熱いかも、わわっ、熱つつ!!」
服をはだけて肩を出して見てみると左肩、背中の方に梅の花が咲いていた。
エルダゾルクに帰って来たんだ。
「はぁ、番の匂いやばい、可愛い、肩やばい。生肌エロい。理性死ぬ」
リヒト様は…………越境してもあんまりかわらないな。本当に番であろうがなかろうが変わらないのかもしれない。それはすごく嬉しい事だと思う。
「リヒト様、キスして欲しい」
「う…………あ……お、おねだり?」
「だめ…………?」
「ちょっとおねだり嬉しすぎて、理性やばそう」
リヒト様は片手を口元に当てて何かと葛藤してる。
「ふぅん、じゃあいいや」
「まて!まてまて!何でお前はいつもそうなんだ!!すぐに諦めんな!もっとねだれよ!」
えぇ……




