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2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜  作者: 雨香
婚約者編

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最後のデート


 私が熱を出した日から、お兄さんとアイラさんが何やら話しをしている姿を見る事が増えた。


 気まずいのは相変わらずなので、それはそれで都合が良かった。私は自分の事に集中できる。


 一週間はあっという間に過ぎて今日もまた私はマフィンを作っている。


 今日のは木苺と、プレーンのと、ココアクッキーをザックリ砕いて混ぜ込んだ物。


 一つ一つ薄い紙で包んで籠に詰める。

毎回クロム君の分を取っておいているけれど、一度来た時以来まだ会えていない。


「お嬢ちゃん、あんたは私に似て可愛いんだからそんな顔おしでないよ!いいかい、股間か顔面だよ!まぁでも、ちっとは話を聞いておやり」


 私がきょとんとしていると、アイラさんはまたすごい量の荷物を持って街に行ってしまった。


「つむぎ、少し歩かないか」

後から、低い優しい声がする。


「えと……」


 お兄さんといると決意が揺らぐ。なるべく顔を合わせたくないし、話すのもそわそわする。


「俺は諦めないからな。お前の気持ちがどうであれ、ガンガン口説く」


「……………………」


 お兄さんはそう言ってひょいと私を横抱きに抱き上げて——————空を飛んだ。


 黒い軍服の背中でバサバサと黒い翼が羽ばたく。


「つ、翼がっ!獣化!?」


「は!獣化だけど、自分の意思で出してるから前のとは違うよ」


 羽があるわけじゃなく、ドラゴンの翼って感じ。


「私にも、お兄さんみたいな翼があれば良かったのに」


「俺がいるだろ。俺がどこでも連れていく」


 逃げる時に便利そうだなと思った事は黙っておこう。


「怖くはないんだな」


「高いところは、好きだよ。特に、この世界に来てからは」


「そうか」


 すごいスピードが出ているけれど風の抵抗は感じない。お兄さんが魔法で何かしているのかもしれない。景色がどんどん変わっていく。


 ついたのは高台に立つこじんまりした小さな教会の様な建物で、お兄さんは二階の大きな窓から中に入って私を降ろした。


「えぇ?不法侵入だよ」


「んなわけあるか。ちゃんと貸し切ってある。カルネクアの辺境伯の持ち物らしい。」


 両開きのアーチ型の窓からは丘の下の小さな湖と牧場が見えて、大きな果実の木の下で牛に似た生き物が昼寝をしている。

そよそよと入る風は草の匂いがして気持ちがいい。


「こういう所に住めたらいいのに」


「俺の邸は嫌いか?」


「そういうわけじゃないけど……アイラさんにずっとお世話になる訳にはいかないし、家、探さなきゃだから」


「……………………エルダゾルクにも似た様な場所は沢山ある」


「そうなんだ」  


 お兄さんは私を見て、それからため息をついて言った。


「紬がぼんやりなのを忘れてた。何言っても響かねえ」


「悪口」


 お兄さんの紺色の目が細まって、眩しいものを見るように優しく私を見る。


「なぜ俺から逃げる」


「何でって、七股最低男だからだよ」


「グハッっっっ!!!おまっ、なんて事言うんだ!!!」


「え?真実を……言っただけだけど……?」


 だから私は逃げたのに。何言ってるんだろ。


「はぁ……はぁ……俺の番怖い!俺はお前と出会ってから他の女に触った事はねぇよ!!!」


「国外に居たからでしょ?それに沢山の彼女がいるのに私に言い寄っちゃだめだよ」


「そこ!?」


「当たり前だよ。最低だよ」


「~~~~~~~~っ!!」


「謝った方がいいよ。彼女達に」


「もう全員切ったと言っただろうが!お前を連れ帰る時点で清算してたんだよ!!!」


「そうなんだ。じゃあ次の彼女は大切にしてあげなね?」


 お兄さんは目を白黒させて、ワナワナしている。


 もう私だって分かってる。彼は私と出会ってから浮気をしたわけじゃない。清算だってしてくれていたはず。上手くいかなかっただけで。


「俺は諦めないぞ」


「うん」


 自分の気持ちの制御すらできていない私が、人の気持ちの制御をする余裕などあるはずもない。


 私の返答が意外だったのか、驚いた顔をしたお兄さんがひょいと私を抱き上げてベットに座った。


「キスしていいか?」


「それはだめ」


「ふぅん、聞いてやんねぇ」


「七股男とそういう事はしたくない。嫌い」


 キスのために近づいた顔が、そのまま肩にポスッと落ちた。


「ごめん……ゆるして」


「………………私と付き合って、ゆくゆくは結婚しても、私に子供ができなければまた沢山の彼女を作るんでしょう?国策とかいって」


「それ……は……」

お兄さんの戸惑いが答えだ。


——結局行き着くのはそこになってしまう。

私には、大勢とお兄さんを共有するなんて耐えられない。


「ね?前の彼女達はそういうの平気そうだったし、大切にした方がいい」


 自分で言って、自分で傷ついている。

それ程、この人が好きだった。


「私ね、お兄さんの事本当に好きだった。最後を楽しい思い出にできて良かった。だから、これでおしまい」


「……………………」


「何とか元の世界に帰る方法があればいいのに」


「っ…………」


「それを探す旅に出るのもいいかもね。どうせ国民権がないのなら、どの国でも同じだし」


 その後は二人とも普通に過ごした。私も最後を楽しく過ごそうとがんばったし、お兄さんも何も言わないでいてくれた。


 触れ合いのない、デート。

牧場をお散歩したり、小さな湖に足まで浸かって遊んだり。

手だけ繋いだ、中学生みたいなデート。

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