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2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜  作者: 雨香
婚約者編

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七番目



 王族専用庭のガゼボで彼を待つ。


 小道からぽっちゃりした人の良さそうなご令嬢が近づいて来て、ガゼボの入り口で私を見下ろすように止まった。


 ぼんやりとした頭で彼女を見返す。


 艶のある長い赤髪をハーフアップに結って、年下なのか幼い顔つきのご令嬢。

真っ青な顔で震えている。 


「き、今日は初めて私の順番だったんです!なんで後からはいった貴方が!!!同じ髪留めを持ってるって事は七番目でしょう!?わた、私、本当に楽しみにしてて!何でよ!!?」


 わあっと俯いて泣いてしまった彼女の髪に、私と同じ髪留めが光っていた。

 ダイヤモンドということは四月生まれなのか、と意味のない事をぼんやり考える。


 七番目。七番目かぁ。また、多いなぁ。

王族専用の庭に彼女が来れたということは、毎回ここが彼女たちとの待ち合わせ場所だったんだろう。


 毎回違う子と、ローテーションでデートする。私は七番目。


「そう、でしたか……何かの手違いだと思います。私は引きますので、どうぞこちらでお待ちになって下さいませ」


「い、いいの?」

 ぱっと顔を上げたご令嬢の顔は涙で濡れている。


「えぇ構いません。不快な思いをさせて申し訳ありません。殿下にも、手違いだったとお伝え下さい。私は去りますので」


「あ、ありがとう!」


 それには返事をせずにガゼボを後にする。

テトに会いに帰ろう。もう沢山だ。


 ポニーテールに留めた髪留めを取ってその場に捨てた。




◇◆◇




「うそだろ……誰か嘘だと言ってくれ」


「私が着く前にアマリリス嬢とガイナ伯爵夫人がいらっしゃいました。お二人ともいかに殿下に愛されたかを懇切丁寧に語ったあと、貴方の番グループに入らないかと勧誘されておりました」


「最悪だ……」


 馬鹿な遊びはもう終わりだと全員に通達させたはず。


「紬嬢のしていた銀の髪飾りを全員頂いていると……ですから仲間だと言い切っておられました。本当ですか?何故同じものを……」


 ユアンの言葉にザアっと血の気が引いていく。それを聞いた紬は何を思った?俺の腕の中で、無邪気に可愛いと喜んでいた顔がチラつく。


「今までは誕生日だけ伝えて店に任せてたんだよ!自分で選んだのは紬が初めてだ!!紬のは、全部自分で選んだら……被ったらしい……それを……気に入って……最悪だ」


「……怒って頂いていればまだ良かったのですが……何かこう、諦めた表情というか……」


 ダラダラと嫌な汗が伝う。


「なんで何十個もあるうちの一つでかぶるんだよ!!!」


「店が同じならそりゃあ被りますよ。あんな量のプレゼントですし。紬嬢が最悪にもあの髪留めを気に入ったのは……日頃の行いのせいとしか…………」


「過去の俺!!死ね!!!!」


「早急に紬嬢にお会いしてください!陛下の件もありますので!!」


「わかってる!!!!」


 怒鳴り声で返しても、悪いのは俺だ。

こんな状況なのに紬にしてもらわなければならない事がある。


 ここ最近安定していた兄上の容体が今日になって急変した。

俺の事情を把握している兄上の侍従から、聖女の力を借りたいと正式に依頼があった。


————紬を兄上に会わせなければならない。




◇◆◇





 ガゼボに足を踏み入れる前に紬じゃない匂いに気づき、同時に足元に落ちる銀の髪飾りに事態を察してしまい愕然とする。


「殿下!手違いだったそうですわ!七番目の方に快く譲って頂けて……私、今日を心待ちにしていましたの……嬉しい……」

 

 記憶にも無い様な女が駆け寄って来て思わず後ろに下がる。


「快く…………七番目……」


「ええ、今日の夜会は私がパートナーになる(ばん)なんです!」


 目の前が真っ暗になり、嫌な汗が背中を伝う。

 全員に終わりだと通達させた。

みんな泣いたり喚いたりしながらも最後は受け入れたと報告をうけている。

なのに何故まだ馬鹿な遊びが続いている?


「馬鹿な遊びは終わりだと通告したはず。下がれ」


「殿下のお気持ちはうかがいましたけれど、番グループの活動とは関係ないとお知らせが来ましたので……」


「アマリリスか!!!」


「え、ええ。後宮ですから、お渡りがない時もあると……」


 俺の仮後宮などと阿呆らしい事を平然とのたまう馬鹿な女のせいで、俺の番が苦しめられた?いや違う、全ては俺に起因する。

俺の過去の不誠実さが最愛の番を傷つけた。


「下がれ、全ては終わりだ。二度と顔を見せるな」


 ショックを受けて泣き出す女を前に、自分への怒りで全身が震え、体が動かない。


 その場に立ち尽くす俺に、何か愛の言葉を呟いて泣きながら走り去る女の背中をぼんやりと眺めた。


 早く紬に会わなければならないのに、地面に縫い付けられた様に体が言う事を聞かない。


 俺自身が俺の魂の半身を傷つけた。

紬のトラウマを知っているはずなのに。


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