番
「よぉ、起きたか?」
「りひ、と、様……?ここは……?」
いつもの離れじゃない、和風モダンだけど広々したリゾート風な部屋。
天蓋から更紗の布が沢山かかった大きなベットに寝かされている。
大きく開いた折れ戸から夕方の庭が見えて、人気のない庭からそよそよと優しい風が時折届く。
「俺と紬の部屋だよ」
上半身を起こすと、後ろから支える様にして抱き込んでくれた。
「体は何ともないか?首、痛かったな」
「体……?なんとも、ないよ?」
「自分まで治しちまったからな、紬は」
ぶわっと記憶がはっきりとしてきて、さっきの事を思い出す。
「あ、あれ?私、あの後、どうし……」
「紬はあの後気を失って四半日寝てた。んで、俺は寝顔をずっと見てた」
「ええ……?」
「寝顔まで天女だな、お前は」
「えぇえ……」
ここ最近そんなに長い間一緒にいた事はない。いつも一時間ぐらいで帰って行ったのに。
「行かなくて、いいの……?」
「どこに?」
「えと、いつもすぐ帰るから……」
後ろから抱き込む腕に力が入る。
「お前が治してくれたから、もう紬とずっと一緒にいられるよ」
良かった、ちゃんと治ってた。
「エルダゾルクに入った瞬間、紬が俺の番だって分かった」
「うん」
「俺の獣性が強すぎるせいで、お前のことを見境なく襲うところだったんだ」
「獣性……?」
「獣の性だな、俺は特に強い。お前の匂いに我を忘れて獣化して、何が何でもお前を手に入れて身体をつなげようとしたんだ。人間が相手じゃ、死んでしまう」
「死ぬって……」
「あの女を見ただろ。あの女は紬の髪と血を使って、紬の匂いを擬態してたんだよ」
髪?だからレイス様は入念に私の髪を梳かしていたの?血も、血液検査のためにと取った記憶がある。
「レイス様の怪我は、大丈夫なの?」
「あの女の心配かよ……獣人は丈夫だからあのくらいじゃ死なない。今は捉えて牢に繋いでる。うちの国で裁くと死罪になるな。王族を害そうとした罪は重い」
「死罪!?」
「俺は別にあの女がどうなろうといいけど、お前は嫌だろ。祖国は、平和な国なんだろ?」
「あ、うん……」
死刑はあったけど、黙っておこう。
「お前の恩赦により国外追放という事にする。狼の野郎を国に返すいい理由になる。あいつ、エルダゾルクに住みたいなんてぬかしやがって」
「えぇ……何のために……」
「お前を口説くためだろ、やっぱあいつ殺すか」
ユリウス様はレイス様と幸せになって欲しいと思う。もう間違えないで、彼女だけを想ってあげて欲しい。
「……リヒト様は、病気じゃなかったって事だよね?」
「………………」
「リヒト、さま?」
「番の名前呼び、やべぇ……」
「………………………………お兄さん」
「待て!!聞いてる!ちゃんと聞いてるぞ!あーと、何だ、病気な!?」
「…………………………」
「お前を好きすぎる病気だっつったのは、嘘じゃなかったろ?状態異常として、丸ごとお前が治しちまったけど」
「嘘じゃないけど、本当の事でもない。お兄さんはいつもそう」
「………………スイマセンデシタ……名前……」
名前で呼ぶ事がそんなに大事かな。お兄さんって言いやすくていいのに。
「なまえ…………」
「ふふふ、リヒトさま、私これからどうなるの?」
「ぐっ、やっぱ、いいな……っとあー、紬は今から俺と番う」
「今から……?」
「優しくするから、大丈夫だよ」
「え、何で……?まだ付き合ったばっかりだよ?」
「…………紬はどこまでも人間だな」
クイっとあごを上げられて、上から覆いかぶさるみたいにキスされる。
「ぷはっ!な、何!?」
「はぁ~~~~~~俺の番可愛い。久しぶりのキスやべぇ」
「何なの……」
「優しく責めてやろうな」
「えぇ……何でそんなに慣れてるの?」
「………………………………お前もう黙れ」
「ええ……?んむっ!?」
とろけるみたいなキスが降ってきて、体がどんどん熱くなる。
優しく髪をすかれてるだけなのに、全身撫でられてるみたいにビリビリして落ち着かない。
「好きだよ。紬が番で、俺は嬉しい」
「私も、リヒト様が好き……」
「あ゛~これはヤベェな……俺の理性はどこまで持つのか」
「やめる?」
「やめねぇよ!!どんだけ我慢したと思ってんだ!!飯行く?みたいなノリで言うなよ!!!」
「ええ……何なの……」




