幹部会議
「採血五回目にしてようやく半刻だ。触れなければ、もう少しいけそうだが……」
「このまま一生血をもらい続けても、限定的な逢瀬になりそうだなぁ。番うには程遠い。血をもらい続けるなんて、紬ちゃんには酷だろうし」
クロードの言葉に頷く。紬の血液を五回も入れて、ようやく半刻だ。紬が錯乱して縋り付いてきた時ですらやばかった。キスなどしたら一発で獣化が始まりそうだった。
「リツ、香水はどうだった。」
ここ最近はリツはずっと研究所に行かせていた。万が一にも結果に不正がない様に三人の研究者に解析させて、その全ての工程にリツを張り付かせた。
「香水に血液の成分は無いっス。髪と、フェロモンを安定させる成分が大部分。分からない成分もありましたが、人間の血液では無いと三人とも結論付けたッス」
「やっぱり色んな意味で迎えるしかないかもね~団体さん!」
馬鹿犬は使節団としての入国申請をしてきている。
文化交流、施設見学、留学申請などの様々な理由を付けて。
毎回断り時間を稼いだが、ここに来て思いもしなかった理由を付けてきた。
「保護しているはぐれ竜人の祖国への送迎の為と言われてしまえば、頷かざるをえません。断れば民衆の怒りがこちらに向きます。こちらにとっても魅力的な提案ではありますし。考えましたねぇ」
ユアンが入国申請書を見ながら言う。
「はっ、保護などと、小賢しい」
異種族との婚姻などで、他の国の神と契約し、その国の国民権を得ることががままある。
その後、死別したり別れたりなど様々な理由でまた祖国に戻りたいと願う時、今までいた国の神との契約解除の書類にサインをして提出しなければ、祖国の神と契約をし直す事はできない。
書類は各国の王家に申請し手に入れるが、これが厄介の元となっている。
俺達竜人の様な魔力と力の強い獣人を、そう易々と手放したくない格下の獣人国は、契約解除の書類を様々な理由を付けて渡さずに自国にしばりつける。おかげで、帰りたくとも帰れないはぐれ竜人が出来上がって問題になっている。
目に見えない神が関わるデリケートな問題のため、煮湯を飲んでいるのが現状だ。
こちらとしては、他の獣人との婚姻の場合は注意喚起をしてエルダゾルク側に住むことを推奨することしかできない。
「ラディアンにいるうちの大使に連絡しろ。現時点で申請している者と、希望者全員を洗い出せ。向こうがわざわざ返してくれるって言ってんだ。希望者全員返してもらう」
「既に大使と連絡済みです。申請していた者七人、帰れるならと希望する者六人の計十三人です。これはラディアンに住まう竜人の八割にあたります。男も女も騎士職についている者が多いはず。戦力図が崩れてでも紬嬢を取り返したいのでしょうねぇ」
「自分がないがしろにしたくせにねぇ~!しっかりついてきてんでしょ?二番目の番ちゃん。交換されるの分かって付いてきてるよね~殿下の方が力も金もあるし王族だし~乗り換えようと画策してんのかな~」
「お、女は怖いな、俺はどうせモテないから関係ないけど!」
「クロードさんまでモテたら俺どうしたらいいんすか!何故かルースさんわりとモテるんスよ!!何故なのか!?」
「俺つよいし~、糸目のタレ目が軽薄そうなのって割と需要あんのよ~!美女はこないけど~!」
「三人とも、うるさいですよ。真面目な話をしているのですが」
ユアンが三人を嗜めながらため息をつく。
「今奴らは国境か?」
「はい。入国を承諾すればすぐに十三人分の契約破棄書類を用意して乗り込んでくるはずです」
「ヴィクトランの野郎について一応報告しろ」
ユアンは俺の言葉に片眉をあげてから資料に目を落とす。
「品行方正、眉目秀麗、近衛騎士の中でも群を抜いた実力者だそうですよ。
ヴィクトラン家と言えば侯爵家。先々代の宰相を出した家柄ですし、家柄もばっちりです。
私も実物を影から拝見して来ましたが、絵画から抜け出たような男で。
殿下とは真逆のタイプの美しい方でしたよ」
「俺の方がいいだろ!」
「ですからお相手は殿下とは方向性が違った方ですってば。劇団員でもあそこまでの美丈夫はいないでしょう」
「じゃあ俺はどんななんだよ!!」
「「「「 ヤンキー竜 」」」」
「…………勝ち目は?」
「何のですか、実力ですか?」
「いや顔」
「……つむぎ嬢に聞いてください」




