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2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜  作者: 雨香
番編

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27/87

逢瀬


「今日はいつもより多く採血をいたしますね?殿下が心配なさって、つむぎ様には眠っていただいている間に実施する事になりました」


 医師のルルリエさんからそう言われれば是非もない。頷いて手渡された睡眠薬を口に入れる。


 五回目の採血になる。私の血がお兄さんの中にあると思うと、一緒に過ごせているみたいで嬉しい。


 病気なら、私が治してあげたいと思う。


 こっそり毎日手に力を込めたり、祈ってみたりと練習しているけれど、私の右手はテトを治したとき以来反応した事はない。力の使えない自分がもどかしい。


 微睡(まどろ)む様な、あらがえない眠さが私を包んで行く。



◇◆◇

◇◆◇

◇◆◇



 遠くでお兄さんの声が聞こえる。

低くて、優しい声。夢なら、このまま聴いていたい。


「気分がいい。このままあと半刻ほどなら会えそうだ。ルース、お前は残れ。戦闘態勢を崩すな。起きた時お前がいても平気かどうかの検証もする」


「へ~い」


 瞼が重くて、目がなかなか開かない。お兄さんがそこにいるかもしれないのに。会えるかも、しれないのに。


「つむぎ」


 お兄さんが呼んでる。優しい声。


「起きろ、つむぎ」


 いつもみたいに抱き上げてくれればいいのに。


「ん…………」


 重い瞼を無理やり開けて、上半身を起こす。頭がクラクラしてぼんやりする。やっぱり、夢だったかもしれない。


「つむぎ、会いたかった」


 声のする方を見ると、私のお布団のそばでお兄さんが胡座(あぐら)をかいて座っていた。いつもの軍服じゃなく、紺の着流しを着ていて、衿元から左腕を引き抜いて片肌脱ぎになっている。


————その腕のそばには、レイス様。


「い、嫌、いや!!レイス様、嫌です!!」


 重い体を叱咤してお兄さんに縋り付く。レイス様から隠す様に。


「殿下、一時退室の許可を。半刻ほどで戻ります」


「ああ、下がっていい」


 お兄さんとレイス様が何か話してる。怖くてガタガタと震えが止まらない。血が足りないせいかもしれない。


「紬、あれはルルリエだ。施術を受けていただけだ。大丈夫だよ」


 そう言って、左腕を袖の中に戻す。


「ルルリエ、さん……?」


「ルース、少しならいけそうだ。お前も下がれ」


「はいよ~。気配だけ、伺ってる~」


 お兄さんは私を膝に座らせたまま話す。


「悪かった、痛かったな」


 何のことだろう。よく分からない。

お兄さんは私の肩を撫でて、またぎゅっと抱きしめてくれた。


「あい、会いたかった……」


「俺もだよ。お前の血のおかげで、今日は会えた」


「全部、あげる、全部あげるから、元気になって」


「っ……」


 お兄さんに縋り付いてしまう。


「紬、あんまり時間がない」


「な、何?」


「俺はお前にずっとそばにいて欲しい。だから、エルダゾルク神と契約して欲しい」


「契約……あの書類?」


 以前ユリウス様に見せられた書類。

甲乙のついた堅苦しい文章で、賞状のような紫色の装飾で縁取られた紙。


「エルダゾルク神と契約するという事は、エルダゾルク国民になるという事だ」


「それだけ?」


「それだけだよ。俺も皆も、生まれた時に拇印でサインしてる。俺がお前を守るのにも、必要な事だ」


「ん、分かった」


 お兄さんが広げた紙は以前ユリウス様から見せられた書類と同じで、こちらは縁取りの装飾が金色だった。


 渡された筆で紬 玲林 とこちらの文字で書いた。書いた書類を渡すと、お兄さんは書類に手をかざし何か唱えたかと思ったら、書類が宙に浮いて下からボロボロと金の炎で燃えて無くなった。


「もう少し、いけそうだな……」


 お兄さんは何かぼそっとつぶやいて、私の髪を優しくすいてくれた。


「めし、すげぇ美味かった」


「っ……」


 言いたい事が沢山あったのに、いざお兄さんを目の前にすると言葉に詰まる。


「病気、は、大丈夫?何の……」


「紬が好きすぎる病気だよ」


「わた、私は真面目にきいてるのに」


「俺も至って真面目だよ」


 またはぐらかされて不満だけれど、今はもうちょっとこの場所にいたい。

うっすらかおる、タバコの匂い。


 そのまま二人とも黙ってしまった。

何度も何度も髪をすかれる。撫でるみたいに。血管の浮いた、筋ばった手。


 肩を撫でられて、髪をすかれる。それをずっと繰り返す。

もう怪我はないのに、大丈夫なのに。


 私の好きな手が、優しく私を撫でる


「そろそろか……半刻はもったな」


 もう帰るみたいに言わないで。前はずっと一緒にいてくれたのに。  


「殿下~ちょっとあやしそうな気配がしたから来た~大丈夫なの~?」


「ああ、もう出る。入っていい」


 廊下で声がして、お兄さんが答える。


 襖を開けて入ってきたのはルース君と……?誰?


「殿下。ルルリエ、只今戻りました」


「ルルリエさん?」


 ずっとぼんやりしていた頭が一気に覚醒する。

お兄さんもびっくりしてる。


 ルルリエさんの金髪で丁寧に巻かれた長い髪が無くなって、緑の髪が出現している。前髪が真横に切り揃えられていて直毛の肩上の髪が斜めにスパッとカットされているアバンギャルドなおかっぱヘアー。


 イメージが変わりすぎてもはや別人の域に達している。


「男うけをねらっておりましたけど自毛に戻しました。男受けよりつむぎちゃんの方が大切なので。染めるのも巻くのも面倒でしたし」 


 な、なんか、話し方まで変わってる気がする。


「男うけ、ウケる~!」

 ルースくんが茶化す様に笑い、ルルリエさんが片眉をあげてそれを見る。


「え、えぇ……?」


「お、おぅ」


 びっくりしすぎて一気に現実に戻って頭が冴えた。


 お兄さんも同じだった様で、私を膝から下ろして立ち上がる。


「ルース、お前は半刻ここに残れ。お前がそばにいても大丈夫か見る。ルルリエ、紬専属として雇う。王宮医師として登録するからそのつもりでいろ」  


「御意」


「はーい、ご飯もらっていい~?」


「殺すぞ」



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