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2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜  作者: 雨香
番編

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窓の逢瀬


「あれ……テトは……?」


「お嬢様!!!」


「ミリーナ、さん……私……」


 ミリーナさんは何も言わずに私の口に吸い飲みのガラス口を当てがってくれた。

喉を潤す水が美味しい。


「まだお熱が高いままですの、お体をお拭きしましょうね」


「ありが、とう。お兄さんは、どこ?」


「——っ殿下は……殿下はお仕事ですわ。エルダゾルクに帰ってきましたので、早速溜まった仕事をしていらっしゃるのです」


「——おしごと……そう、じゃあ、しょうがないね」


「お嬢様……」


「ミリーナさん、この世界は、その……えっと……」


ハッ、ハッと息が上がり、苦しい。


「お嬢様!ゆっくりで構いませんわ、息をゆっくり吐いてください!」


「っ……あの、男の人は……お付き合いするまでを楽しむ……というかっ!女の子を、落とす、事を、楽しむ、みたいな文化がっ、あ、ある?」


「————っ、そんな物!ございませんわ!」


「そう……じゃあ、私に、何か、原因、二回もっ……」

ハッ ハッとまた息が上がる。四角い箱に閉じ込められたみたいに息が苦しい。


 ミリーナさんが大慌てで出て行って、知らない女の人を連れてきた。

金髪の白衣を着た女の人。

背中をさすられて、息をゆっくり吐くよう伝えてくるけれどままならない。


 お兄さんがいないと息ができない。




◇◆◇




「意識がお戻りになっても過呼吸を繰り返しております。今は鎮静剤で眠っていただいております。それとその……」


「何だ」


「殿下の所在を毎回お聞きになるのです」


「——っ」


「お仕事とお伝えしておりましたが、なぜか過呼吸をおこされますので……今はお嬢様の薬を取りに行っていると……」


「クソッ!」

握った拳でテーブルを叩く。


「この世界に、殿方が女性を落として楽しむ文化があるかと、蒼白なお顔で尋ねられました」


「——————っ、もういい!!!紬についててやれ」

 

 紬のトラウマを忠実になぞっている。

俺のせいで俺の宝が弱っていく。


「一度エルダゾルクを出る」

 

「それじゃあ意味ないだろ!戻ればまた同じだ!」

クロードが悲痛な顔で言う。


「つむぎの体調が最優先だ。心が壊れる前に無理させてでも国外に出して療養させる」


(あるじ)、僕、ほうこく」

クロムがおずおずと前に出る。


「何だ」


「オオカミ、動いた。お嬢の小屋、さぐりあてた。あの辺り、竜人、珍しい。すぐこっち、来ると思う」


「そうなれば、エルダゾルク内にいた方が守りがききます。みすみす我らの姫を渡すわけにはまいりません。早急に移転ゲートを閉じます。しばしの時間はかせげるかと」


「屋敷に戻った方が守りやすいね~、動かすのかわいそうだけど。犬にくれてやる訳にはいかないもんね~」


「駄犬が!!ぶっ殺してやる!!」




◇◆◇




 次に起きたらまた違う部屋にいた。

私が睡眠薬で眠っている間に移動をしていると言っていた。


 昼間ずっと寝ていたせいでもう眠れそうにない。

窓の外はもう真っ暗で、夜の帳が下りている。


「テト、どこにいるんだろう」


 今回の部屋は一階じゃなく、外には家々の屋根が見えている。

 まだ熱っぽい体を叱咤して立ち上がり、窓を開けると湿った夜の風と共にクィーーーンと私を呼ぶような声がした。


「テト!テト!!会いにきてくれたの!?」


 慌てて下を見ると、窓の下にテトが佇んでる。その背に、お兄さん。


「おにい、さん」


 お兄さんの目の中の金色が、月の光で燃えてるみたいに煌めく。


「つむぎ」


 お兄さんの低い声が心地よく響く


「俺を信じろ」


 窓枠に乗り出して下に手を伸ばす。

テトも首を伸ばしてこちらをみてる。四階ぐらいの高さがあって、テトとお兄さんに手は届かない。


「グッ………………」


 お兄さんが軍服の胸元をグシャっと掴んだかとおもったら、バサバサっと音がしてお兄さんの背に大きな黒い翼が生えた。


「ガッ…………ハッ…………!」


「お兄、さん……?」


 ガバッとまた上を向いて私を見たお兄さんの瞳は、金色の瞳孔が完全に縦に伸びていた。猛禽類のような、捕食者の目。


 お兄さんはすぐにふいと顔を逸らし、テトに足で指示をして去って行ってしまった。




◇◆◇




「グッ…………あ゛あぁ」


 無理やり獣系に変化させられて感情の押さえが効かない。

普段何気なくする獣化とは全く違う、強制的な獣化と、暴力的な思考。


————早く、早く俺のものに

————誰にも取られてはいけない。見せてはいけない。奥深くに隠して、俺だけのものに。


「ハッ……ハッ……~~~っつ……」

意地で獣性を抑え込む。


「風上に立って、四階の高さまで離れても、お姿を拝見しただけでここまでとは……竜体にならなかっただけマシでしょうか」


「ユアン——っ、水をよこせ——」


 ユアンから水差しごと水をひったくり、頭からかぶる。流れる水の感覚で少しだけ頭が冷えた。


「はぁ、はぁっ、……番とは、すごいもんだな……。あれが手に入るなら、世界を壊してもかまわないという思考になる」


「あなたなら出来てしまう事が最高に物騒ですね」


「クロム!報告しろ!!」

無理やり頭を働かせないと、思考がひっぱられる。


「ん。お嬢の周り、竜人、うろついてたの、バレた。けど、国に帰った」


「格下が我々の国に攻め入るのです。今頃ない知恵をしぼっているのですよ」


「クロム坊、ヴィクトランはあせってたか?」


「クロード兄、オオカミ、目、座ってた」


「そりゃもう末期~!なりふり構わないで来るかな~!その方が楽しいな~!」


 格上と分かっている竜人に、なりふり構わずくる馬鹿なら簡単だと思う。

一度国に帰ったと言う事は、策をめぐらせてくるはずだ。


「紬はエルダゾルクの至宝だ。必ず守れ」



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