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2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜  作者: 雨香
番編

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17/30

旅路2


 研究施設の中のおおきな機械で移転するものとばかり思っていたら、森の入り口の何でもないところに小さな関所のような建物が立っていて、その横に二階建てぐらいの高さの円が地面に埋め込まれていた。


 立体ではなく円形の鏡みたいな形で、銀の縁の中はオーロラに輝いていて向こう側は見えない。


 関所のような建物の中で受付をして料金を支払うシステムの様で、装置の銀の縁は機械っぽいけれど、苔むしていたり、蔦がからんでいたりと、ちょっと不安になる。


「あの中に入るの?い、痛い?」


「慣れない奴はちょっと酔うかもな?ほら、こっちこい」


 リツさんが全員分の受付を済ませている間に馬車から降りて休憩だったけれど、並んでる人も沢山いたのにリツさんはすぐに出て来て出発となった。


 移転装置の前にも行列はあるのに、ひょいと抱き上げられてまた馬車に逆戻りだ。

 

 そのままお膝の上に抱き込まれているけれど、こうしてもらうと揺れが軽減されるという凄い効果が付与されるのだ。


「不安か?」


「う、うん……あれ?もう動き出した?行列に並ぶのかな?」

 窓のカーテンを開けようとしたら、お兄さんに抱き込まれてしまって動けない。


「不安なら、こっちに集中しろ」


「え?」


 お兄さんの方に視線を戻すと、顔中に優しいキスが降って来た。頬に、(まぶた)に、こめかみに。


 お兄さんの紺の瞳の中の金色が蜂蜜を溶かした様にトロッと揺らぐ。


「好きだよ」


「んんっ!?」


 最後に唇にキスされて、頭の中は真っ白でふわふわする。


「終わったぞ、ごっそーさん」


「へ!?」


「外出ていいぞ」


「えぇ??」


 外に出ると暗い森は消えていて、見渡す限りの平原と大きな湖が出現していた。

 お天気まで変わっていて、あっちは曇天だったのにこちらは快晴であったかい。


「わぁ!綺麗!」


「ここでちょっと休憩だな。今日の夕方また一回移転する。体力温存しとけ」


「なんかよくわかんない間に終わった……」


 気がつくとみんなが生ぬるい目で見てくる。お兄さんだけは飄々としていて機嫌が良い。


「殿下~いちゃいちゃは帰ってからにして下さいよ~!」


 ルース君の言葉にハッと気づく。

キスされた事、バレてる!!!!!


 急激に熱くなった顔を両手で隠し、指の隙間からお兄さんを見ると私を見て悪い顔で笑っていた。


「ひぃっ!魔王!」


「おい、何だと。恋人に向かって」  


「~~~~~~っ!!私、初心者なのに!!」


 抗議したつもりだったのに、魔王のスマイルが深くなっただけだった。


「さぁ、お嬢様、湖畔でお茶にしましょうか」


 もう一つの小さな簡易的な馬車から出て来たミリーナさんとリツさんが敷物を敷いてお茶を用意してくれた。


「みんなこっちのふかふかの馬車にのればよいのに」


「へぇ?」


 片腕でひょいと抱き上げながらお兄さんが言う。


「あの二人に見られながら俺とキスしたかったのか?」


「~~~~~~~!?」




◇◆◇




 湖畔の木陰で敷物を敷いて、ピクニックの様なのに出て来たのは陶器のティーカップで、何だかチグハグな感じがする。


 湖ではテトと三匹の馬が水を飲んでいて、馬車の馬は馬車に繋がれたままでリツさんと御者さんが世話をしているのが見える。


 やっぱりテトだけ一回り大きいし、立派だ。

他の三匹は茶色だったり、濃いグレーだったり、シルバーだったりする。


「テトは鞍だけなのに、他のお馬さんは鎧を付けてるんだね?」


 ユアンさんとルースくんとクロードさんの馬は皆武装している。鉄の仮面と、お尻にもカバーするみたいな鎧。


「テルガードが嫌がったからな。まぁ、別に戦場に行くわけじゃねぇから許した」


 私の膝にごろんと横になったお兄さんが言う。


「そうなの?重かったのかな」


「はっ!お前に甘えたいからだろ。毎日目の前でマーキングしやがって」


「あれ、マーキングじゃない!スリスリしてるの!!」


「それをマーキングっつーんだよ!俺とテルガードの交互でマーキングしてんの。大体の獣人と獣は近寄れなくなる」


「違うのに。お兄さん嫌い」


「はぁ!?」


「ブッワッハハハハハハハ!!!」

やっぱりルース君がお腹を抱えて笑ってる。

もうスルーする!


「戦場じゃないのに、他の子は武装するの?」


「竜人に突っかかってくる奴はまずいねぇけどな。竜人は戦闘民族だけど、普通の女や子供だっている。竜国エルダゾルクは豊かな国だから金を持ってると思われて一か八かで夢見る奴がいるからな。牽制だよ」


「そうなんだ。怖い世界だね、ここは」


「紬の世界は平和なのか?」

いつもと違ってふわふわとした私の髪をいじりながらお兄さんがが聞く。


「うん?……そうだね、戦争は同じくあったかな。けど、私の住んでた島国は戦争はなくて、もうずっと平和だったから……私は戦争を知らないの」


「へぇ。エルダゾルクに来れば同じだ。お前に戦争は見せないよ」


「お兄さんは戦いにいっちゃうの?」


「紬のそばにいるよ」


 なんだか答えになっていない様な気がする。お兄さんはこういう言葉遊びみたいな、抜け穴みたいな言い回しが上手い。

 

 嘘は言わないけれど、本当のことも言わない、みたいな。


 それがすごく私を不安にさせる。


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